研究課題/領域番号 |
26870411
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中橋 睦美 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 助教 (60596211)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | VBNC / DNAマイクロアレイ / 食中毒予防 |
研究実績の概要 |
VBNC(Viable But Non-Culturable)とは「生存しているが通常の培養では菌として検出困難な状態」である。また損傷菌は食品の保存・消毒・殺菌の行程において細菌がVBNCやそれに近い状態へと変化した総称であり、通常の培養法では増殖不能や遅延を示すが、人体内では蘇生・増殖可能となる。VBNC菌に起因した大規模な食中毒事件の発生が明らかとなりVBNCは食中毒の感染リスクとして危惧されている。2011年には腸管出血性大腸菌(EHEC,血清型O-104)による大規模食中毒事件が欧州で発生した。これまでにも食中毒原因細菌がVBNC状態を形成する意義が議論されるとともにそれらを原因とする食中毒リスクが危惧されてきた。しかし、VBNC・損傷菌の発生や修復・蘇生機構は十分明らかにされておらず予防法も確立されていない。そこで本研究では、特異的な波長の光がVBNC・損傷菌の発生や蘇生・修復を制御する分子機構を解明し新たな食中毒予防法を開発することを目的とし、光照射の条件検討や詳細な制御分子メカニズムさらに生体モデルを用いた実証評価を行うこととした。光源にはLED(Light Emitting Diode)を用いて次の4段階に従って計画を推進する。 1.LED光の波長・照射エネルギー比率の特定 2.LED光照射による傷害・修復制御分子機構の解明 3.動物モデルを用いた生体実験による実証 4.感染制御を目指した照射条件およびデバイスの最適化
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LED照射により特定のタンパク質が酸化されることを見出しており翻訳語修飾や代謝機能解析のためプロテオーム解析・メタボローム解析を予定していた。しかし当初の計画よりもマイクロアレイ実験の結果解析に時間が必要となったためこれらの検討を省略し、研究計画のスリム化を行った。平成28年度はマイクロアレイ結果の解析に重点的を置きクラスター解析・Pathway頻度解析等を行った。次年度にこの解析結果を基に動物モデルを用いた生体実験を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
食中毒原因菌に対してLED光を照射した菌を動物モデルを用いて実証試験を行う予定である。生体内における損傷菌・VBNC菌の蘇生や増殖の評価を行うとともに病原性の解析を行う。生体内における病原性の評価は食中毒発生の重要な意義を有するため下痢や炎症性マーカーの病原性解析について詳細に検討を行う。 さらにLED照射条件の最適化を図りそれに伴うデバイスの改良を行い、食中毒予防のための殺菌装置の実用化を目指す方向である。必要に応じてLED製造メーカーとの協同により数十nmオーダーで光の照射波長を変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始時にはLED照射により特定のタンパク質が酸化されることを見出しており翻訳語修飾や代謝機能解析のためプロテオーム解析・メタボローム解析を予定していた。しかし当初の計画よりもマイクロアレイ実験の結果解析に時間が必要となったためこれらの検討を省略し、研究計画のスリム化を図ることとした。そのゆえプロテオーム解析・メタボローム解析に必要な物品購入の必要がなくなったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
動物モデル用いて実証試験を行うため、動物の購入・飼育に使用する予定である。動物モデルを用いてLED光を照射した食中毒原因細菌を感染させ生体内における損傷菌の蘇生や増殖の評価、さらに病原性解析のため使用する予定である。特に病原性解析は下痢・炎症性マーカーの評価など詳細に行う予定である。 これらの実験は本学所属の大学院生の研究指導・教育を兼ねた研究推進班で実験を遂行する予定である。
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