VBNC(Viable But Non-Culturable)とは「生存しているが通常の培養では菌として検出困難な状態」である。また損傷菌は食品の保存・消毒・殺菌の行程において細菌がVBNCやそれに近い状態へと変化した総称であり、通常の培養法では増殖不能や遅延を示すが、人体内では蘇生・増殖可能となる。VBNC菌に起因した大規模な食中毒事件の発生が明らかとなりVBNCは食中毒の感染リスクとして危惧されている。しかし、VBNC・損傷菌の発生や修復・蘇生機構は十分明らかにされておらず予防法も確立されていない。そこで本研究は、特異的な波長の光がVBNC・損傷菌の発生や蘇生・修復を制御する分子機構を解明し新たな食中毒予防法を開発することを目的とした。 研究最終年度においては、LED光を腸炎ビブリオに対して照射しVBNC状態にあることを確認した後、生体モデルとしてGalleria mellonellaを用いた実証評価を行った。その結果、コントロール群とLED光照射群を比較すると、感染から6時間・12時間後においては致死率に差が認められたが24時間後においては全て死に至ってしまうため、顕著な差は認められなかった。これは感染させる菌量を変化させた場合も同様の傾向であった。 LED光照射後の腸炎ビブリオにおいては遺伝子解析の結果、抗酸化作用を有する特定のアミノ酸合成経路が活性化することが明らかとなった。
|