研究課題/領域番号 |
26870413
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
原田 新 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 講師 (70721132)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己愛人格 / 新入社員 / 職場適応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新規学卒者の新入社員を対象として、3年間、計4回にわたってweb調査を実施し、自己愛人格が職場ストレスに及ぼす影響や、有効なコーピング方略について縦断的に検討することである。 平成26年度には、2回の調査を実施した。まず第1回目の調査では、新入社員1236名(高卒85名、専門学校・大学・大学院卒1151名)を対象として、入職直後の4~5月にweb調査を行った。さらに第2回目の調査では、新入社員が入職から数か月後の8~9月に、第1回目の調査と同様の対象者に調査依頼を行ったところ、869名(高卒49名、専門学校・大学・大学院卒820名)から回答を得た。2回の調査で実施したアンケートは共に、自己愛人格、およびその関連変数としての自我同一性、職場適応の指標として職場ストレス(職場ストレッサー、心理的ストレス反応、コーピングを含む)および職務満足感等をそれぞれ測定する尺度から構成された。 これら2回の調査から得られたデータを用いて、まず自己愛人格と職場ストレスとの関連について検討を行った。その結果、入職直後の自己愛人格の中で過敏性や共感性の欠如を表す下位尺度、その中でも特に「自己愛的憤怒」が、入職から数か月後の職場ストレッサーやストレス反応に最も強い正の影響を及ぼすことが示唆された。また、自我同一性と職場ストレスとの関連についても検討した。その結果、入職直後の自我同一性の中で、特に「心理社会的同一性」が、入職から数か月後の職場ストレッサーやストレス反応に最も強い負の影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画は、新入社員に対する2回の縦断調査を実施し、それらのデータから得られた結果を、学会等で発表することであった。平成26年度には、2回の調査を共にほぼ予定通りの時期に実施し、得られた2回分の縦断データの結合をした上で、ある程度の分析も行った。また、一部の結果については、日本教育心理学会第56回総会や日本発達心理学会第26回大会にてポスター発表を行った。その意味では、おおむね計画通り、順調に進展しているといえる。ただし、縦断データの解析方法についてまだ疎い部分があり、本研究での縦断データをまだ十分に扱い切れているとはいえない。今後、縦断データの解析方法についての知識や手法をさらに身に付けた上で、より詳細な結果についての発表を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず平成27年度の開始時期に、これまでの2回の調査で回答を得られた平成26年度新入社員に対して、第3回目の調査を行う。第3回目調査については、既にインターネット調査会社と、調査項目の内容や調査依頼者等に関する打ち合わせを終えており、計画通りの時期に調査を実施できることになっている。さらに同様に、平成28年度の開始時期には、第4回目の調査を実施する予定である。それと並行して、縦断データの解析方法に関するさらなる知識や手法の習得を目指し、文献収集を行うと共に、学会や研究会での関連ワークショップ等に積極的に参加する。その上で、3回分、もしくは4回分の縦断データを用い、新入社員の自己愛人格が様々な職場ストレスに及ぼす影響について詳細に検討すると共に、どのようなコーピング方略が高自己愛者の職場ストレスの低下に有効であるかについての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データのより詳細な分析を行う為に、当初購入予定であった統計解析ソフトよりも、さらに高額のソフトを購入した。その為、参加予定であった学会の旅費としては、不十分な金額しか残らず、本年度には使用できなかった。この残った分については、次年度の旅費に充てる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、まず主な費用として、インターネット調査会社への調査業務委託費に約50万円を使用する。残りの約30万円と次年度使用額の37,788円については、研究協力者との打ち合わせや学会発表のための旅費として約20万円、学会への参加費、ポスターの印刷費、論文化する際の費用等に約8万円弱、書籍やデータ保存用ポータブルハードディスク等の購入に約58,000円を使用する予定である。
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