平成28年度には4回目の調査を実施し,平成26年度から続く新規学卒者の新入社員を対象とする全4回の縦断調査を終了した。4回目の調査も,1~3回目の調査と同様,自己愛人格,およびその関連変数としての自我同一性,職場適応の指標として職場ストレス(職場ストレッサー,心理的ストレス反応,コーピングを含む)および職務満足感等をそれぞれ測定する尺度で構成された。 まず4回の調査終了時での在職・離職の状況について検討した。4回目終了時点で在職・離職の状況を確認できたのは,1回目調査で回答を得られた1236名のうち527名であり,そのうちの377名がまだ最初に入職した職場に在職中,150名が既に離職している状況であった。 これら527名のデータを用いて,Time4時点での離職の予測要因を検討するロジスティック回帰分析を行った。その際,独立変数としてまずstep1で性別,学歴(高卒か大卒か),会社規模(従業員数),月収,残業時間を投入した上で,step2でTime1時点での自己愛人格および自我同一性を測定する各下位尺度を投入し,従属変数としてTime4時点での在職・離職の状況を投入した。その結果,Time4時点での離職に対して,自己愛人格の中では「自己主張性・自己中心性」が中程度の正の影響を及ぼすと共に,自我同一性の中では「心理社会的同一性」が離職に中程度の負の影響を及ぼすことが示された。なお,step1で投入した変数の中では,会社規模(従業員数)と月収が有意な負の影響,残業時間が有意な正の影響を及ぼしていた。 今後,これまでに得た4回のデータを用い,自己愛人格および自我同一性が職場ストレスや職務満足感について及ぼす影響について詳細に検討すると共に,コーピングの調整効果についても検討する予定である。
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