研究課題
不完全変態類昆虫のモデル種であるフタホシコオロギを用いて,孵化後発生システムを解明することを目的とする。明らかにされつつあるゲノム解析の成果と新規ゲノム編集技術を利用することで,新たにコンディショナルノックアウト作製技術を開発し,翅形成過程における分子メカニズムを明らかにする。本年度はまず、コンディショナルノックアウト系統作製技術の開発を行った。コオロギにおいては既にCRISPR/Cas9システムを用いて,ゲノムの標的配列特異的に変異を導入することに成功しているが、標的遺伝子のシス調節領域の配列が長い場合や配列の特定が困難な場合が多く,変異導入だけではコンディショナルノックアウト系統を作製することはできない。そこで,ゲノム中からシス調節領域があると考えられる配列を抜き出す実験系の確立を試みた。標的にはactin遺伝子を用いた。ショウジョウバエの報告を参考にして実験を行ったが,標的配列をゲノム上から抜き出すことには成功したが、効率が非常に低く実用性がないものだった。そこで、新たにノックイン技術を用いたコンディショナルノックアウト法を考案した。まず本年度は、考案した方法を実践するためにノックイン技術の確立を行った。その結果、コオロギのHOX遺伝子であるabd-A, Ubxを標的としてGFP遺伝子をノックインすることに成功し、HOX遺伝子の発現をGFPによって可視化することに成功した。今回確立されたノックイン技術は,コンディショナルノックアウト法だけでなく、様々な研究に応用できると期待される。現在は,考案した新たなコンディショナルノックアウト法の確立に取り組んでいる。平行して翅形成に関わる遺伝子の同定を行ったが,期待されたような結果が得られていない。そこで計画書に予定していた通り,トランスクリプトーム解析を行い、翅形成に関連する遺伝子の同定を行っていく予定である。
3: やや遅れている
当初の計画とは異なり、コンディショナルノックアウト技術においては、予定していた方法では困難であり,未だ確立されていないため。しかし、コオロギにおいてノックイン技術の確立に成功したため,新たに考案したコンディショナルノックアウト技術は,早い段階で確立できると考えられる。また、翅形成に関わる遺伝子の同定においては,RNAiでは期待されたような結果が得られていないが、トランスクリプトーム解析のための準備を進めている。
確立に成功したノックイン技術を用いて,コンディショナルノックアウト技術を確立する。具体的には、ヒートショックタンパク質を標的としてcas9やトランスポゼースをノックインすることで,熱誘導性のコンディショナルノックアウト技術を確立する。また、トランスクリプトーム解析を行い翅形成に関わる遺伝子を同定する。その後、同定された遺伝子に対して,コンディショナルノックアウトを行い、機能を詳細に解析する。また、同定された遺伝子に対して,GFP遺伝子などの蛍光タンパク質をノックインし、ライブイメージングによって発現を詳細に観察する予定である。
RNAiによる解析において予定していたような表現型が得られなかったために,必要となる消耗品の購入を取りやめたため。
翌年度分と合わせて,トランスクリプトーム解析を行うための予算として使用する予定である。
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Methods
巻: 69 ページ: 17-21
10.1016/j.ymeth.2014.05.006.
Scientific Repots
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