研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラットの自然な寒冷時体温調節行動と考えられる「尾隠し行動(Uchida et al., 2012, J Comp Physiol A)」に対する女性ホルモンのエストロゲン(E2)の影響を明らかにすることである。本年度は【実験1】尾隠し行動を修飾するE2の脳内活性部位の形態学的解析を実施した。エストロゲン投与(E2(+))、非投与(E2(-))の卵巣摘出ラットを寒冷(16°C, 2時間)または室温(27°C, 2時間)暴露し、腹腔温、尾部皮膚温、尾隠し行動を計測した。暴露直後、還流固定し脳を採取し、神経マーカーcFos蛋白の免疫組織化学染色を行い、陽性細胞数を計測した。以下の結果を得た。 (1) 寒冷暴露は、E2(+), E2(-)の両群において、扁桃体、小脳傍脚核、第二体性感覚野、島皮質、傍分界条核でcFos免疫陽性細胞数を増加させた。 (2) 寒冷暴露時、島皮質のみE2(+)群よりE2(-)群で有意にcFos免疫陽性細胞数が増加した。 (3) 寒冷暴露時、腹腔温、尾部皮膚温は群間の差が認められなかった。しかし、尾隠し行動はE2(+) 群でE2(-) 群より有意に増加し、その開始時間が有意に早かった。 【結論】雌ラットにおいて、E2は比較的軽度の寒冷環境で寒冷時体温調節行動を惹起させること、その行動に脳の島皮質が関与することが示唆された。
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