研究実績の概要 |
【目的】ラットの自然な寒冷時体温調節行動と考えられる尾隠し行動に対するエストロゲン(E2)の影響を明らかにすることである。【実験2】尾隠し行動を修飾するE2 のTRPM8への影響の解析(個体数追加)、【実験3】尾隠し行動を修飾するE2のTRPA1への影響の解析を実施した。TRPM8、TRPA1とは感覚神経終末に発現する冷受容分子である。【実験2】E2投与、非投与の卵巣摘出ラットにvehicleまたは10%メントール(M, TRPM8作動薬)を塗布し、寒冷(16℃, 2h)または室温(27℃, 2h)暴露し、腹腔温、尾部皮膚温、尾隠し行動を計測した。【実験3】実験2と同様、30%シナモアルデヒド(C, TRPA1作動薬)を塗布し暴露を行った。【結果:実験2(各群n=7)】Mは寒冷でも室温時でも、E2の有無に関わらず、体温を上昇させた。またMはE2の有無に関わらず、室温時には尾部皮膚温を上昇させ、寒冷時には下降させた。E2は寒冷時にM塗布した時、体温と皮膚温に影響しなかった。しかしE2は室温時にE2はM塗布による体温上昇を抑制した。Mは室温時、E2投与時のみ、尾隠し行動を低下させた。【結果:実験3(各群n=4)】Cは寒冷時にE2の有無に関わらず、体温低下を抑制したが、室温時はE2投与ラットで体温を低下させ、E2非投与ラットでは体温低下を抑制した。Cは寒冷時、E2投与ラットで尾部皮膚温を低下させ、非投与ラットで尾部皮膚温低下を抑制した。室温時は、E2投与ラットでは尾部皮膚温に影響せず、非投与ラットで尾部皮膚温を低下させた。Cは寒冷時また室温時、尾隠し行動を低下させた。【結論】E2はMによる尾隠し行動の低下に影響しないが、室温時にMによる体温上昇を抑制したことから、E2はTRPM8を介した体温調節反応を修飾すると考えられた。実験3については個体数を追加し、検討する予定である。
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