2015年度に明らかにした西南日本太平洋側の河川堆積物の同位体比と流域地質の関係を定量的に考察するため,ArcGISを用いて地形データから各河川の流域界を求め,産業技術研究所のシームレス地質図データを重ね合わせることで各流域における各地質の面積比率(地質組成)を定量化した.その結果,ある特定の地質が流域の50%以上の面積を占める複数の河川の間においては,堆積物のSr-Nd-Pb同位体比のばらつきが小さくなることがわかった.この収斂したSr-Nd-Pb同位体比を,その地質が排出する堆積物を代表する値とみなすことができる.さらに,対象とした全河川の流域を統合した地域に最も広く分布する上位6の地質(内帯と外帯のジュラ紀付加体,白亜紀付加体,第四紀火山岩,白亜紀深成岩,領家―三波川変成岩)が流域面積の50%以上を占める河川の堆積物に関しては,これらの地質に依存して,Sr,Nd,Pbのいずれかの同位体比に互いに有意な違いがあり,これらの値が,堆積物の起源地質を推定する上で有効な指標であることが確認できた. 四国海盆の半遠洋性堆積物の供給源側における同位体比の時代変動の程度とその要因を評価するため,2016年度に続き,鮮新・更新統の前弧海盆堆積物である掛川層群の泥岩の同位体比の時代変動の解明に取り組んだ.現地調査により,凝灰岩と泥岩を計38試料追加採取し,20μm以下の細粒成分を抽出,Sr-Nd-Pb同位体比を測定した.その結果,泥岩に関しては2016年度に得た結果と整合的する値が得られたほか,海水準変動に依存する起源変動が存在することが明確になった.また,掛川層群中の凝灰岩の値を今回初めて明らかにしたことにより,半遠洋性泥岩に対する火山灰の寄与が微少であることが確認できた.
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