研究実績の概要 |
複数の知覚を生じさせうる物理的に同一の画像(曖昧画像)を見ても、複数の知覚が同時に生じることはない。本研究課題においては、曖昧な画像情報から一義的な知覚に至るまでの脳内情報処理について明らかにすることを目的とする。とりわけ、これまで知覚心理研究で報告されてきた「曖昧画像知覚を安定化させる順応効果」(e.g., Long & Toppino, 2004)に着目し、この順応効果を減弱させる脳内視覚情報処理について脳波(EEG)・脳磁図(MEG)を用いて検討する。具体的には、この順応効果の減弱化に「視覚刺激の変化検出処理」(e.g., Urakawa et al., 2010)が関与しているとする仮説の下、刺激変化検出処理が大きく駆動されていくにつれて知覚レベルでの順応効果が弱まっていくのかどうか検討する。
本課題計画の第1年度目にあたる本年度は、まず研究で用いる視覚刺激画像およびその呈示プログラムを作成した。この刺激呈示においては、曖昧画像を呈示するとともに刺激変化をその周辺に生じさせるものとし、それらをそれぞれ独立に設定できるものとした。次に心理実験を行ったところ、刺激変化が曖昧画像と同時に生じた条件にではそうでない条件に比べて、曖昧画像に対する順応効果の減弱化が認められた。心理実験で得られた結果は国際学会において発表し、その内容について現在専門誌に投稿している。また、来年度以降に計画しているEEGおよびMEG実験については現在準備中である。
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