PPR蛋白質は、特異的な塩基を認識するPPRモチーフの連続によって構成されているRNA結合蛋白質である。近年、我々は、PPRモチーフの配列特異性機構の解明に成功した。現在、任意のRNA配列に結合するようにデザイン、改変する手法に取り組んでいる。本研究では、PPR蛋白質を利用した細胞内RNAの可視化方法の確立を目指した。昨年度は、PPR部位の開発に注力し、設定したRNA配列に結合するPPR蛋白質の作成方法を確立することができた。本年度は、さらに配列特異性などの性能検査、また実際にGFP融合による標的RNAの可視化に挑戦した。昨年度に開発した動物培養細胞でのレポーターアッセイを利用したPPR蛋白質と標的RNAの結合評価系を用いて、十分なRNA結合に必要なPPRモチーフ数の検討を行った。その結果、予想通り、モチーフ数が減少するに応じて結合能は低くなること、12モチーフ程度は最低必要であることが分かった。さらに、標的配列に変異を導入し、許容されるミスマッチ率について調べた結果、3-5塩基程度のミスマッチした配列でも認識されることが分かった。これらのことから、塩基認識部位の改良や使用する必要性があることが分かった。次に、現状のカスタムPPR蛋白質とGFP蛋白質を融合し、HEK293Tに導入した。70-80%の細胞は細胞質に満遍なく発現する一方、残りの細胞では非常に高発現しさらに細胞形態が変化するほど細胞へダメージを与えることが分かった。これらはPPR蛋白質の凝集性により引き起こされていることが予想された。そこで、PPR蛋白質の凝集性を解消するためにいくつかの親水性アミノ酸を導入し、細胞で発現させた。その結果、未だ細胞死するものも見られるが、その割合は低下した。今後、さらに安定的にPPR蛋白質を異種細胞で発現させることができれば、多彩なRNAのイメージングも可能であると考えている。
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