研究課題
サイズ・温度に応じて構造を多彩に変化させる水クラスターに着目し、氷への物質の溶解現象とその過程の解明を目指した。 前年度までに設計・製作した装置を使用して水クラスターを生成して電子衝撃によりイオン化して検出し、水クラスターへの金属クラスターの溶解およびクラスター同士の反応実験を行った。金属クラスターと水クラスターとのクラスター同士の反応実験と平行して、金属クラスターや金属酸化物クラスターを水分子と一分子ずつ逐次的に反応させ、溶解(溶媒和) 過程を調べる実験を行った。具体的には、銀、アルミニウム、セリウム、タンタルなどの金属から成るクラスターやその酸化物、窒化物を生成し、水分子が逐次的に吸着する様子を観測した。その結果、水への溶解に有利なクラスター構造を見出すとともに、水の吸着サイトはクラスター上に局在した半占軌道(SOMO)の位置に支配されることを明らかにした。さらに、水への溶解反応に加え、タンタルクラスター正イオンがアンモニアと逐次的に反応する様子を観測し、アンモニアへの物質の溶解過程を探究した。この反応では、アンモニア2分子毎に3分子の水素が脱離し、窒化タンタルが生成した。この窒化反応は、タンタルの形式的な酸化数が+5に達するまで、逐次的に進行することが分かった。+5価に達すると、その後はアンモニアは窒化タンタルクラスターに分子状に吸着し、溶媒和が進行した。一方で、同じ5族のバナジウム、ニオブは、3価の窒化クラスターイオンを生成することが知られている。理論計算の結果、金属の種類による窒化の程度の違いは、金属の電気陰性度に起因することが明らかとなった。クラスターの窒化の程度は安定に存在するバルク窒化物の組成とも対応している。つまり、固体金属窒化物の組成は、金属の電気陰性度に支配されることを見出した。
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Topics in catalysis
巻: 61 ページ: 119-125
10.1007/s11244-017-0869-y
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: in press ページ: in press
10.1039/C8CP00424B