葉に形質二型(有毛型・無毛型)が見られるオオイヌタデと,それを利用する植食者群集に着目し,形質二型が維持されているメカニズムや適応的意義を明らかにする研究に取り組んだ。また,オオイヌタデの主要な植食者であり,翅多型が発見されたイチゴハムシについて,多型発現機構と適応的意義を明らかにする研究に取り組んだ。 前年度に引き続き、オオイヌタデの葉のトリコーム(微毛)が植食者群集に及ぼす影響を調査し、(1)オオイヌタデを食害する主要な昆虫がイチゴハムシとクサイチゴトビハムシ、およびタデキボシホソガであること、(2)葉のトリコーム(微毛)は、イチゴハムシとクサイチゴトビハムシからの食害を回避する上で有効であること、(3)有毛型の葉を摂食するとイチゴハムシ幼虫の発育が遅延したり、成虫の産卵数が低下したりすること、(4)タデキボシホソガは有毛型にも無毛型にも同じように産卵するが、有毛型の方が幼虫期の生存率が高い可能性があること、(5)オオイヌタデを隔離条件下で単独栽培すると、無毛型の方が種子を多く生産するが、両方の型を同じ鉢で栽培して競争させるとその差が検出されなくなること、(6)イチゴハムシ存在下で同様の実験をすると、食害を逃れられる有毛型の方が種子を多く生産することなどを明らかにした。 また、野外における有毛型オオイヌタデの比率は、イチゴハムシ密度が高い地域ほど高くなる傾向が認められ、両型の頻度を変えて栽培した予備的な実験では負の頻度依存選択は検出されなかったため、オオイヌタデの形質二型の維持には、各地域のイチゴハムシの密度という環境異質性が関与している可能性があると考えられた。
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