研究課題/領域番号 |
26870439
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
堀江 哲也 上智大学, 経済学部, 准教授 (40634332)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 保全政策 / 自発的な保全地提供 |
研究実績の概要 |
2016年度は、米国における、土地所有者の自発的な生態系保全行動を促す政策の経済学的研究を1990年代から2016年の最新研究までサーベイした。米国には絶滅危惧種法のような直接規制もあるが、土地所有者の自発的な保全活動を促進する政策として、保全休耕地プログラム(CRP)がある。ここでは、この政策導入が持つ「意図せざる副作用」に着目した。副作用には2つあり、1つはWu(2000)が提案した「スリッページ効果」、もう1つはCRPの政策効果の持続性に関わる「異時点間スピルオーバー効果」である。 また私有地を保全地として確保する方法には、CRPのような政府が土地保有者に地代を支払い有限期間だけ借りる以外の方法がある。たとえば土地所有者が政府及び地域の個人を含む民間の非営利組織に土地を売却または寄付する方法がある。または、土地の売却をしなくとも、これらの組織に、保全地役権を売却するまたは寄付する方法がある。このような政府及び地域の個人を含む民間の非営利組織と土地所有者との間で結ばれる土地に関する法的拘束力のある契約そのものや、保全地役権の買い取りまたは寄付を受ける民間の非営利組織を、土地トラストと呼ぶ。 CRPは保全地を確保または拡大するための(連邦)政府による公共投資の一種と捉えることができる。一方で、政府や土地トラストへの土地または保全地役権の売却・寄付は、土地所有者による、保全地を確保するための民間投資と捉えることができる。一般に公共投資は民間投資をクラウディング・アウトすることが知られているが、このことは、生態系保全の文脈においても同じことがあてはまるのかどうかについての研究についてもサーベイを行った。 本研究結果は、「米国の生物多様性保全政策の設計と評価」という論文にまとめられ、近刊の『環境経済学のフロンティア』(分担執筆)の中の1つの章として発表される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は研究代表者が勤務先を移動したため、新しい講義の用意などに時間を使ってしまい、研究を十分に遂行することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は研究の速度が著しく落ちてしまったが、2017年度は農業共済のデータを利用し、獣害(特にイノシシ)による獣害被害の推定を行う。また同時に、自治体からの補助金が農家の防除柵の設置をどの程度促しているかについての分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は研究代表者の所属先の異動があったため、新しい講義の準備などで予想以上に時間を消費してしまい、研究を十分に遂行できなかった。そのため研究の進捗にも遅れが出ている。そのため、研究費を次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、最終年度となるが、農家及び自治体への獣害対策に関するアンケート調査を行う予定にしている。資金のほとんどがこの調査に投入される予定である。
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