研究課題/領域番号 |
26870440
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
蔵重 智美 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (60568955)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 甲状腺 / 放射線 / 発癌 / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
①in vitro 及びin vivo における131I 内照射及びX線外照射誘導性DNA二重鎖切断(DSBs)の線量依存的または時間経過による変化の解析 1)131I内照射・X線外照射誘導性DSBsの線量依存的、または時間経過によるDSBs変化の解析:線量依存性…X線外照射は0~10Gy、131I内照射は0~370KBqで処理、時間経過…0~48時間で検討を行った。その後53BP1核内fosus数を定量し、in vitro 線量依存性、in vitro 時間経過、in vivo線量依存性、in vivo時間経過の4つの系を作製した。
②131I内照射・X線外照射誘導性DSBs発生における活性酸素種(ROS)の関与及び、抗酸化剤によるDNA DSBs抑制効果の検討 1)in vitroにおけるX線外照射誘導性DSBsの抑制効果の検討:外照射の実験系では抗酸化剤(NAC)の前処理によりROSの上昇を抑制したが、53BP1を指標としたDSBsは抑制せず、中性コメットアッセイで再検討した結果、NACのX線照射前投与によるDSBs抑制効果を示した。一方X線照射後のROS値は増加せずNACのX線照射後投与によるDSBs抑制効果はなかった。2)in vitroにおける131I内照射誘導性DSBsの抑制効果の検討:370KBq添加1.5時間後のROS産生は1.2倍の増加に留まった。今後NACのDSBs抑制効果を検討する実験系を確立するためには線量の追加についての検討が必要である。3)in vivoにおけるX線外照射・131I内照射誘導性DSBsの抑制効果の検討:in vivoではコメットアッセイによる解析が難しくNACのDSBs抑制効果の検討が困難となった。今後はマウス甲状腺への放射線照射後に発生する転座や遺伝子再構成等について解析しモデルを作製する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請時に、本研究で用いるとしていたDNA損傷マーカーの単独での使用はDNA損傷後の経過を観察する場合に適切であるかの疑問が生じ、他のDNA損傷マーカー(γH2AX)を用いての確認や、他のDNA損傷検出法(コメットアッセイ)での再検討を要したため、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 131I内照射誘導性DSBsの抑制効果の検討 370KBq内照射後の細胞内のROS値の増加は基礎値と比較して1.2倍程度であることから370KBqの内照射により生じたROSの、DSBs発生への影響は小さい可能性がある。今後は740~1110KBqまで増加させ、NACのDSBs抑制効果を検討する。 2) 遺伝子改変マウスを用いた131I内照射・X線外照射誘導性発癌モデルの作成 現在131Iを832.5KBqを投与、あるいはX線8Gy照射後経過観察中のTGF-βflox/flox・TPO-Creマウスは、生後1年で、p16-/-マウス、PTEN+/-マウスは生後6~8か月でsacrificeを行う。甲状腺を採取し、ホルマリン固定・パラフィン包埋する。これらの組織切片を用いて病理学的変化の観察を行う。照射群のみに病理学的変化が認められた場合、染色体の転座・欠失等の解析を行う。 3) in vivoにおけるX線 外照射・131I内照射誘導性の転座および遺伝子再構成モデルの確立 8週齢のC57BL/6マウスにX線1~10Gyを外照射、あるいは131Iを166.5~832.5KBq内照射し、2~48時間後にsacrificeを行う。甲状腺を採取後は、①ホルマリン固定あるいは凍結組織として保存しfluorescence in situ hybridizationを行って、染色体転座や遺伝子の欠失を検出する。②RNAを抽出し、特定の遺伝子(例えばRET)の5’末端部分の増幅をRapid Amplification of cDNA End法で行い、5’末端側の転座による遺伝子再構成の有無を検出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に対して進捗に多少の遅れが生じており、計画では使用予定であった試薬等の購入が一部なされていなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の研究計画で実行できなかった項目で使用を予定している消耗品等の購入に使用する。
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