研究課題/領域番号 |
26870445
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮崎 航 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (90512278)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳発達 / 神経分化 / 環境化学物質 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究は脳発達におけるダイオキシン類の毒性発現メカニズムの解明について、アリル炭化水素受容体:AhRならびにその核内移行因子:Arntの本来の生物学的な役割について不明な点を明らかにし、従来の「ダイオキシン曝露ありき」の研究から脱却し、AhR/Arntの本来の機能を明らかにしたうえでの毒性評価法の確立を目指すことを目的としている。 平成26年度においてはAhR・Arntのノックダウンによる神経分化におけるAhR・Arntの機能解析をまずおこなった。ヒト胎児脳由来神経前駆細胞株Rencellに対し、AhR・ArntをターゲットとしたRNA干渉法によるノックダウンを行った。神経分化前にsiRNAを遺伝子導入したのち、分化前ならびに分化開始後3日目にAhR,Arntの発現がノックダウンされていることを確認した。さらに、ノックダウン後にタンパクならびにtotal RNAを回収し、神経系細胞への分化状態を神経細胞とアストロサイトのマーカーの発現を確認したところ、どちらの細胞系のマーカーも発現量の現象が観察された。 同時にAhR,ArntのChIP-seq法のため、Rencellを用いたそれぞれのChIP assay法の確立を行い、ChIP-seqに向けた準備段階に入っている。また、これまでに得られているダイオキシン曝露時のマイクロアレイデータから転写因子パスウェイ解析を行い、曝露影響を認めるいくつかのシグナル伝達経路の候補について検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より予定していた、AhRならびにArntのノックダウンに関して、研究を進める上で十分な実験試料を得ることの出来る系が完成しており、また、そのシステムを用いて、神経分化の変化も認められている。一方ChIP-seqについてはほぼ準備が整っており、合わせて、パスウェイ解析からダイオキシン曝露時に関与しうるカスケード候補もあがっている。以上からほぼおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、まず、平成26年度中に新たに認められたノックダウンによる神経分化の変化について、そのメカニズムを解明することを主たる目的とする。あわせて、ChIP-seq法により得られたデータを下に、AhRおよびArntのより詳細な解析を行い、神経分化における生理学的な役割についての解明を目指す。以上のことから平成27年度も当初の予定通り、研究が遂行できると予想するが、ChIP-seq法の遂行にあたり、当初予定していた予算よりも多く使用する可能性があるため、動物実験については十分な遂行が難しいかもしれない。計画的に研究を遂行することにより、研究費の倹約を行い、当初の予定通り研究を進める。
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