本研究は脳発達、特に神経分化におけるアリル炭化水素受容体:AhRならびにAhR核内移行因子:Arntの機能解析を行うことにより、ダイオキシン類の毒性発現メカニズムの解明を目指すものである。 平成27年度においては、昨年、RNA干渉法によるヒト胎児脳神経前駆細胞株Rencellの内因性AhR/Arntのノックダウンならびに神経系細胞への分化の減少を認めたため、他の分化マーカーの発現確認により分化状態のプロファイルを行った。また、ノックダウンに対して、AhRおよびArntの過剰発現時の神経分化状態の検証も行った。しかし、神経分化において、過剰発現の有意な影響は認められなかった。 同時に、Arntが甲状腺ホルモン受容体:TRとクロストークしている可能性についてこれまで検証してきた。そのため、ArntがTRを介して遺伝子転写制御にかかわる可能性を考慮し、ArntによるChIP assayをTRが結合すると予想されるゲノム上の結合領域について解析した。しかし、Arnt依存的な有意な変化は認められなかった。これらの結合状態は細胞種または分化の状態によって変化することが十分に考えられるため、より詳細な検証が必要である。 また、AhRならびにArntをターゲットとしたChIP-seq法を行ったが、解析に能う十分な結合シグナルが得られることができず、本研究期間での解析を断念した。ChIP法ならびにChIP-seq法はサンプルの状態のみならず、抗体によっても結果が変化するため、適した抗体のスクリーニングを行い、今回の経験を踏まえ今後も進めていきたい。
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