研究課題/領域番号 |
26870447
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
森 大輔 熊本大学, 法学部, 准教授 (40436499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 質的比較分析 / QCA / ブール代数 / 論理式 / 判例研究 |
研究実績の概要 |
平成27年度には,森大輔「判例研究への質的比較分析(QCA)の応用の可能性―米国の弁護人依頼権に関する判例の分析を例に」熊本法学136号(2016年)262-318 を刊行することができた.この論文では,まず法学の中でも判例研究において,複数の判決例の比較から一定の結論を導く思考方法として「ミルの方法」(一致法,差異法)と呼ばれるものに近い方法が取られていることを示した.その上で,それをさらに発展させた質的比較分析(QCA)という近年,社会科学において複数事例の比較研究で用いられている方法が,法学の判例研究と親和性が高いことを示した.そして,具体例として,米国の弁護人の援助を受ける権利についての1960年代までの裁判例の分析を行った.本稿ではQCAの用い方の説明に集中するために,あえて既に判例変更されて現代では実際的意味を失っている裁判例を用いた. また,森 大輔「Chilton, A. & Tingley, D. (2013) “Why the Study of International Law Needs Experiment”」国家学会雑誌128巻9・10号(2015年)965-968においては,QCAにも関連する,社会科学におけるデータを用いた因果分析のあり方に関する最近の議論を取り上げた.この論文では法学の各種分野の中でも,特に国際法研究に関連して取り上げた文献を研究した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に優先的に進めることになっていた米国の弁護人依頼権の判例等についてQCAによるデータ分析を実際に行うことができた.すなわち,当初の計画では,具体的な法的事例へのQCAの適用を試み,その際の法的事例としては,米国の弁護人依頼権の判例等についてQCAによるデータ分析を,以下の様なステップを踏んで行うとしていた.(1) 先行研究等を調べ,ファクターだと考えられるものを列挙する.(2) 個々の事例が(1)で考えたファクターのどれを持っているかをまとめたデータを作成する.(3) (2)のデータを真理表と呼ばれる表に変換する.(4)真理表から論理式を導く.(5) 導かれた論理式を解釈する.このうち,平成26年度で行うことができたのは(1)の途中までであり,平成27年度には(2)以降のデータを作成してデータ分析を行う段階にかかる予定であった.その予定通りに行うことができ,最終的に論文を刊行することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,本研究全体に必要とされる基礎研究として,QCAの基礎理論について整理を行う.また,本年度は,これまで2年間の成果を踏まえ,本研究課題の完成を目指す.具体的には,法学における,判例分析とQCAの類似性・差異について,より深い考察を行った上で整理する.さらに,ソフトウェアを利用したQCAの分析やファジィ集合を利用したQCAについても一定の整理を行う予定である.そして,本年度中に,日本語で論文を刊行することを目標に進めていくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初購入を予定していた書籍の一部が出版が遅れるなどしたために購入をしなかった。それもあり、物品費を中心に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に予定していた書籍の購入などをすることにより次年度使用額分を使用していく予定である。
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