研究課題/領域番号 |
26870454
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
佐々木 羊介 宮崎大学, テニュアトラック推進機構, 准教授 (60704674)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 豚 / 疫学 / データベース / 繁殖成績 |
研究実績の概要 |
養豚生産における繁殖成績・肥育成績・群成績を広域的に一元記録するデータベースの構築を目的として、各農場における生産記録の保有形態について調査を行なった。聞き取り調査は合計16回行い、各農場における生産記録の保有形態の現状を確認した。その結果、農場では各自で生産記録を保有しているが、その記録形態が異なることが明らかになった。そこで、生産記録を一律して収集するために、保有のための統一形式を作成した。調査対象とした項目として、各月における農場の生産指標の合計値または平均値を用いた。大きく分類して以下の6つの項目に関して聞き取りを行った:当期中の種豚の出入り( 月末の母豚の在庫頭数、淘汰した母豚数、死亡した母豚数)、当期中の繁殖成績(分娩した母豚数、分娩産子数の合計、生存産子数の合計、離乳した母豚数、離乳子豚数の合計、種付けした母豚数)、当期中の飼料購入重量(授乳豚用、妊娠豚用)、当期中の出荷頭数(肥育舎からの肥育豚出荷、出荷枝肉重量の合計)、当期中の離乳舎への出入り(離乳舎での死亡頭数)、当期中の肥育舎への出入り(肥育舎での死亡頭数)。この調査および統一形式の作成には、宮崎県、畜産関係団体、研究機関と協議を行い、現場にて活用が期待できる生産記録の収集方法やリスク因子の探査に重点を置いた。本統一形式を基に、繁殖成績・肥育成績などの生産記録を一元記録するデータベースの概要を構築した。本統一形式を元に、宮崎県内の農場に生産記録の提供を呼びかけた。生産記録の提供には宮崎県配合飼料価格安定基金協会の協力を得て、飼料メーカーや製薬メーカーなどを介して、県内の生産者に提供を呼びかけた。昨年度は約40農場より協力を得られ、各農場における繁殖成績・肥育成績・群成績の記録の提供を受けた。各月ごとの記録の収集に伴い、統一形式の修正を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画として、生産性の定量化および飼養管理の実態把握の予備調査として、既に生産性の記録を保持している養豚生産農場を対象として分析を実施する予定であった。この予備調査の対象農家として、「宮崎県の口蹄疫復興地域である児湯・川南地域の 養豚農家を対象とした生産性調査」に協力している約10の養豚農場と、宮崎県経済農業協同組合連合会に加盟している養豚農場のうち、生産記録ソフトを活用して繁殖成績 および肥育成績を適時記録・保持している約30の養豚農場を候補として挙げていた。しかしながら、2013年末より全国各地で発生した豚流行性下痢症(PED)に伴い、豚の移動や繁殖成績がPEDへの対応に伴い大きく影響を受け、予定してい農場のうち、数農場は本調査へ参加することが出来なかった。さらに、PEDの被害が甚大であった農場は、自農場の生産性を開示することを躊躇うこともあり、初年度に予定していた農場数の達成が困難であった。しかし、宮崎近郊の農場において、当初予定していなかった農場団体が調査に参加することになり、最終的には概ね予定通りの農場数を確保することが出来た。 生産記録の収集方法に関しては、当初は各月の生産記録を作成してもらい、それを3ヶ月毎に回収する予定であった。しかし、記録を作成してから月日が空いてしまうと、情報が風化し、記録をすることを忘れてしまうリスクがあったため、記録の回収は翌月の月末までに行う形に変更した。また、回収方法はFaxまたはE-mailとし、各農場で最も提出しやすい方法を選択してもらった。収集した生データは記載事項に不備が ないかを確認し、追記事項および修正事項があった際は各農場に再度修正を求めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では、平成26年度に得られたデータの解析結果を基に、さらなる情報収集および情報提供農家数の増加を図る。特に、平成26年度に得られたデータの解析結果を、生産記録を提供しなかった農場にも配布することにより、自身の農場の生産記録を提出することのメリットを広く普及する予定である。既に生産記録を提供している農場に関しては、各農場に特有な事象に関して解析を実施し、農場全体の傾向および生産性向上のための改善点を明記するとともに、自農場における弱点と優先的に改善する必要のある飼養管理について説明を行う予定である。また、県内や九州近郊で開催するセミナーや勉強会で積極的に話題提供すること、養豚機関誌において調査内容の概要および結果を掲載させることにより、さらなる情報提供農家数の増加を図る。また関連団体との協力体制も継続して強化していく。具体的な例として、農業共済組合、NOSAI連宮崎、開業養豚獣医師といった管理獣医師に対して本調査内容及びその結果を啓蒙することにより、各農場における疾病情報の共有および参加農場数の増加につなげる。特に、PEDが発生していた地域では、疾病が発生することによって被る生産性の被害および経済性の被害を定量化し、普段から生産性を記録することが自農場に対してどのようなメリットがあるかを明らかにしていく。 また、生産記録をWeb上で一元管理するためのデータベースの作成に着手する。本調査で使用している統一形式を基に、繁殖成績・肥育成績などの生産記録をWeb上で入力できるようにし、それを保持・運営できるようなデータベースの概要を構築する。入力形式は、Webから月別記録の各項目を入力する形式とし、大本の生産記録を自動的に生産項目に変換できるようにプログラミングを行う。また入力した項目が、月別の比較や農場間での比較ができるようにし、入力側の農場の生産者が有益な情報が得られるように工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた防疫用消耗品一式に関して、研究期間中における疾病発生により、当該農場へ直接趣くことが難しいケースがあった。そのため、農場訪問時に着用が必須である防疫用消耗品一式の消耗が少なく、予定額よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度以降に使用する防疫用消耗品一式の購入に本費用を使用する予定である。
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