研究実績の概要 |
本研究では、超小型ミニブタ(マイクロミニブタ,MMP)に持続性エストロジェン製剤を投与した後の末梢血中各種エストロジェン濃度の変化および肝臓におけるステロイド代謝にかかわる遺伝子発現動態を検討した。 初めに、MMPにおけるエストラジオール17β(E2)の代謝経路について検討を行うため、卵巣摘出したメスMMP(n=4)に持続性エストロジェン製剤であるエストラジオールプロピオン酸エステル(EDP)0.3 ml (0.10 ± 0.01 mg/kg) を筋肉内注射し、その後の末梢血中エストロジェン(エストロン3-硫酸(E1S),E2およびエストロン(E3))濃度の変化を解析した。その結果、E1SおよびE2濃度は投与前に比べ、それぞれ3および4日目まで有意に高い値で推移した(P<0.01)が、E3濃度は試験期間中有意な変化を認めなかった。以上の結果から、EDP投与後派生するE2は主にE1Sへ変換されることで体内からの排出がなされていると考えられた。 続いて、卵巣摘出したメスMMP(n=4)および去勢したオスMMP(n=5)へEDP 0.3 ml (メス;0.10 ± 0.00 mg/kg, オス;0.11 ± 0.01 mg/kg) をそれぞれ筋肉内投与し、投与3日前、投与後2、5、9および14日目に麻酔下で肝生検および採血を行った。得られた肝臓は、肉用豚においてステロイド代謝に関与すると報告されている遺伝子群(CYP1A1, CYP1A2, CYP3A22, SULT2A1, 3βHSD, UGT)発現をリアルタイムPCR法で観察した。血液は、E1SおよびE2濃度の測定を行った。EDP投与後2日目の末梢血中E1SおよびE2濃度は、雌雄MMPともに他の採材日に比べ、それぞれ有意に高値を示した(P<0.01)。しかし、観察した遺伝子はいずれも雌雄ならびに投与後日数による有意な変化を認めなかった。以上の結果から、MMPのエストロジェン代謝は、肉用豚と異なる可能性が示唆された。
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