空腹・満腹であることの知覚は、我々の摂食に関わる価値判断と行動を決める重要な情報である。動物の摂食行動調節は、これまで主に、視床下部での摂食関連ペプチドを中心に精力的に研究が進められてきており、それらのペプチド産生細胞の摂食行動に与える機能の重要性が確認され、さらにそれらの気候を担う詳細な神経回路が明らかにされつつある。本研究では、私は、それらの視床下部システムに加え、もう少し我々の意識に上るような感覚を扱う大脳皮質領域の食欲に対する関与について調べることを目標とした。視床下部の摂食関連ペプチドの中でも、オレキシンに着目し、その広い投射先領域の中でも、特定の大脳皮質領域への神経投射の影響を選択的に調べるためのツールとして、オプトジェネティクスを利用した。 まず、本研究を開始するにあたり、マウスで、新規に3つの摂食関連行動実験系を確立した。(6時間累積摂食量の計測、食べ物に対するモチベーションの測定、嗜好性の測定)また、オプトジェネティクスの実験に用いる動物ラインの検証を行った。視床下部オレキシンニューロンでの光感受性タンパクの発現、また、それらを光刺激することによる行動学的、生理学的、組織学的反応である。行動学的検証では、オレキシンニューロン光刺激により、摂食量等に変化が見られることを確認した。さらに、ウイルスを用いた光感受性タンパク導入法では、研究対象としていた大脳皮質領域への投射が明確に確認できた。しかし、視床下部オレキシンの大脳皮質領域への影響を明らかにするためには、更なる実験が必要である。
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