研究課題/領域番号 |
26870460
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西川 拓朗 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (90535725)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シクロフォスファミド / 造血細胞移植 / 心筋障害 / アクロレイン / 活性酸素 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
シクロフォスファミド(CY)はアルキル化剤に分類される抗がん剤であり、急性白血病、乳がんなど多くのがん種の治療に用いられている。CYはプロドラッグであり、肝臓で代謝を受け、抗腫瘍活性を示す4-hydroxycyclophosphamide(HCY)など様々な代謝物に変化する。CYの重大な毒性として大量投与時に起こり得る致死的心筋障害があるが、その機序は不明で予防法も確立されていない。 我々は今年度、ラット心筋細胞(H9c2)、ラット肝ホモジネート(S9)を用いてCY心筋障害の機序と、その予防法について検討した。 H9c2細胞をS9で代謝させたCY (CYS9)に曝露し、心筋障害をMTT測定、LDH測定、活性酸素種産生、アポトーシス誘導により評価した。また、心筋保護剤候補として抗酸化剤であるN-acetylcysteine(NAC)、isorhamnetin (ISO)、CYP阻害剤であるβ-ionone (BIO)を併用し心筋障害を同様に評価した。また培地中のCY、CYS9中のCY代謝物(HCY、o-carboxyethylphosphoramide mustard:CEPM、acrolein)濃度をLC/MS/MSやHPLCで測定した。すると、CY単独や低濃度のCYS9曝露では心筋障害を認めなかったが、250μM以上のCY濃度ではCYS9で心筋障害を認めた。NAC、ISO、BIOの併用によりCYの心筋障害は抑制された。ISO、BIOはCYの代謝自体を阻害することで心筋障害を抑制していたが、NACはCYの代謝を抑えることなく心筋障害を抑制していた。NACを併用するとHCY・活性酸素種産生に変化なかったが、acroleinは著減し、CEPMは著増していた。CY心毒性の主体はacroleinで、NACはacrolein産生を抑えることでCY心毒性を予防する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、ラット心筋細胞(H9c2)、ラット肝ホモジネート(S9)を用いた研究により、シクロフォスファミド(CY)心筋障害の主体がacroleinで、N-acetylcysteine(NAC)、はacrolein産生を抑えることでCY心毒性を予防する可能性があることを始めて、見出した。このことはCY心筋障害の機序解明に大きく迫るものであると考える。 ただし、acroleinのCY心筋障害への関与は間接的な実証なので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はacroleinを直接的に心筋細胞に曝露し、心筋障害を起こすのか、そして心筋障害を起こすとしたらN-acetylcysteine(NAC)により防ぐことができるかどうかを検討する。また、acrolein以外の代謝物を各々曝露し、心筋障害についても同様に検討する。 NACによりCYの心筋障害を防ぐことから、心筋細胞内のグルタチオン濃度など、acrolein以外の機序についても検討をしていく。
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