研究課題
【背景】cyclophosphamide(CY)はアルキル化剤に分類される抗がん剤であり、急性白血病、乳がんなど多くのがん種の治療に用いられている。CYは肝臓で代謝され、4-hydroxycyclophosphamide(HCY)、aldocyclophosphamide(AldoCY)となり、細胞内でphosphoramide mustardとしてアルキル化作用を示す。その際にacrolein(Acr)が副反応物として生成される。細胞内のaldehyde dehydrogenase (ALDH)活性が高いとAldoCYを不活性代謝物のo-carboxyethylphosphoramide mustard (CEPM)へ変化させることができる。我々はラット心筋細胞(H9c2)、ラット肝ホモジネートを用いた研究よりCY心毒性の主体はAcrで、心筋障害の機序にALDH活性の低下が関与するのではないかと考えた。【方法】H9c2細胞に各種CY代謝物(HCY、CEPM、Acr)を曝露した。心筋障害はMTT測定、LDH測定、活性酸素種産生、アポトーシス誘導、還元型グルタチオン(GSH)測定、live cell imagingにより評価した。また、各種CY代謝物に曝露したときのALDH活性も評価した。心保護剤候補として抗酸化剤の一つであるN-acetylcysteine(NAC)の併用も行なった。最後にHCYに曝露後の培地中のacrolein濃度をHPLCで測定した。【結果】CEPM曝露では心筋細胞障害は全く示さなかったが、HCY、Acrを曝露するとGSHは低下、活性酸素は増加し、著明な心筋細胞障害を示した。しかし、NACで心筋細胞を前処理し併用すると、HCYとAcrによる心筋細胞障害は抑制された。NACを併用することで還元型グルタチオンの低下は抑制され、活性酸素の産生量は減少していることが分かった。心筋細胞内のALDH活性はAcr曝露時に著明に減少し、NAC処理で、その減少は抑制されていることもわかった。また、培地中のHCYはAcrへ変化していた。【結語】CY心筋障害の主体はacroleinで、NACは還元型グルタチオンの低下を防ぎ、かつALDH活性を増加させることで、CY心筋障害を予防する可能性がある。
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