研究課題
移植片対宿主病(GVHD)は、造血幹細胞移植の成否を左右する重大な合併症の一つでありながら、その診断は依然として医師による主観的診断であり、早期に客観的に診断する方法が切望されている。我々はこれまでにヒト臨床サンプルおよびGVHDマウスモデルを用いた血漿プロテオミクス解析によりGVHDの早期診断マーカーとしてCCケモカインの一つであるCCL8を同定し、CCL8がGVHDの病態にかかわる可能性のある因子であることを示唆してきた。本研究ではGVHDにおけるCCL8の因果関係解明へ向けた移植マウスモデルに適した近交系(C57BL/6)のCCL8遺伝子欠損(KO)マウス作製を作成し、それを用いたGVHDモデル解析を行った。本マウスはZinc-finger nucleaseを用いることで近交系マウスを直接用いた標的部位特異的かつ限局的な欠損を可能としており、染色体上で近位に存在する他のCCケモカインジーンクラスター中のCCケモカインの発現には影響をおよぼさず、血液学、発生学、生殖学的な側面からも野生型近交系マウス(WT)と同等な、GVHDマウスモデルに用いてWTとの比較解析が可能なマウスであり、本KOマウスをrecipientとして用いたアロGVHDマウスモデルでの生存解析を行った結果、recipientにおけるCCL8の欠損はWTと比較して早期のGVHD由来の死亡を有意に減少させることが示され、CCL8がGVHDの一因である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在までにZFNを用いることでexon内にNHEJを生じさせたKOマウス作製に成功しており、このことから血液学、発生学、生殖学的な側面からWTと同等条件下での、GVHDマウスモデル比較解析が可能である。現在までに本KOマウスを用いたアロGVHDマウスモデル解析の結果からrecipientにおけるCCL8の欠損はWTと比較して早期のGVHD由来の死亡を有意に減少させることが確認されている。
今後は、上述のKOマウスを用いたGVHDマウスモデルにおける臨床学的、病理学的、生化学的な側面からの評価を行う。また、ZFNを用いてBALB/c由来CCL8 KOマウスも作製しdonor, recipient共にCCL8発現を欠損した系でのGVHDマウスモデル解析、およびWTとKOマウスを用いてキメラマウスを作製することで造血系、非造血系由来細胞 各々のCCL8発現コントロールした系でのGVHDマウスモデル解析の検討も行う。
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