研究課題
本研究の目的は、顔表情認知に関与する2つの経路(「すばやく粗い」神経経路と「遅くて緻密な」神経経路)の重み付けが、対象が母親か他者かによって変わりうるか、そのダイナミクス特性を明らかにすることである。顔表情認知には、「すばやく粗い」神経経路と「遅くて緻密な」神経経路の両方が関与しており、前者が視覚野から扁桃体へ至る経路、後者が視覚野から紡錘状回へ至る経路に相当すると考えられている。応募者はこれまでに顔表情認知の中で母親顔に注目して処理過程を検討し、1)自身の母親の笑顔を認知する際に「すばやく粗い」経路に関与する前頭前野が賦活すること、2)自身の母親の笑顔は対照の笑顔よりも「すばやく」認知できることを見出した。これらのことは、母親の笑顔認知の際には「すばやく粗い」経路に重きがおかれている可能性を示している。本研究では、被験者自身の母親顔(笑顔・真顔・怒り顔)写真および友人顔(笑顔・真顔・怒り顔)写真を見た際の脳活動について機能的MRIで撮像し、一次視覚野、扁桃体、紡錘状回を関心領域として多ボクセルパターン解析を行った。画像の見た目には依存しないことを示すために、それぞれの表情写真に3種類の空間フィルタを適応させた。その結果、左側紡錘状回が母親か友人かの弁別および表情の弁別をしており、これらは画像の見た目には依存しなかった。他の領域では有意な弁別正答率は得られなかった。これらの結果は、応募者の予想と異なり、左側紡錘状回が近親者における人物同定と表情認知の両方に関与していることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
機能的MRI実験を想定の被験者数にて行い、これらのデータについて多ボクセルパターン解析を行った。これらから得られた成果をまとめてOrganization for Human Brain Mapping学会および第18回日本ヒト脳機能マッピング学会にて報告した。
今後、論文にまとめて発表する。
2014年7月9日、16日、30日の実験にてMRI機器トラブルにより撮像データを充分に得ることができず、当初計画に遅延が生じたため
論文の執筆と投稿・発表を行う。この際に不足データがあればMRI撮像を行う。
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J Cogn Neurosci
巻: 27 ページ: 453-63
10.1162/jocn_a_00718
http://web.sapmed.ac.jp/physiol2/achievement.html
http://web.sapmed.ac.jp/jp/03bqho000022qckz-att/03bqho000026ij9c.pdf