研究課題
これまでの代表的な顔認知モデルとしては、Bruce & Youngが行動実験によって示し、Haxbyらがそれらを発展させて脳内モデルとして発表したモデルがある。このモデルによれば、初期視覚野に入った顔の情報は、「相手が誰か」という情報と相手が「どんな表情か」という情報にわかれて、それぞれ紡錘状回と扁桃体で処理される。一方で、扁桃体は見知らぬ他者に対する警報システムも担っている。Haxbyらのモデルは見知らぬ他者の顔認知によるものであるが、近親者の場合、警報システムが不要である。このことは、近親者の顔認知では扁桃体の働きが比較的小さく、紡錘状回により依存したシステムが存在する可能性がある。そこで本研究では、健常若年者17名に協力してもらい、近親者として自身の母親の笑顔・真顔・怒り顔を撮影した写真を用意し、これを見たときの脳活動を機能的磁気共鳴画像法により測定し、多ボクセルパターン分析(MVPA)を用いて脳活動を評価した。コントロールとして同性の友人の笑顔・真顔・怒り顔写真も提示した。MVPAの結果、左側紡錘状回において母親と友人の弁別におけるデコーディング正答率が有意に高かった。さらに同部位では、表情のデコーディング正答率も有意に高かった。右側紡錘状回、左右扁桃体、左右鳥距溝では有意なデコーディング正答率は得られなかった。以上のことから、近親者の顔認知では、「相手が誰か」という情報と「どんな表情か」という情報はともに左側紡錘状回で処理され、扁桃体の関与は小さいことが示唆された。これらから、Haxbyらの提唱したモデルとは異なる、近親者特異的な顔認知モデルを提唱した。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: -
10.1038/srep31388
Neuroscience Research
巻: 112 ページ: 26-36
http://dx.doi.org/10.1016/j.neures.2016.06.002
http://web.sapmed.ac.jp/physiol2/achievement.html