平成28年度は、これまでの研究の経緯から障害女性・障害とジェンダーに焦点を当てて研究を進めることを意識してきた。そこで本研究テーマと関連づけて、日本において女性障害者に対してどのような支援、すなわちどのような合理的配慮の提供が行われているのかを把握するために、日本の女子大学の障害者支援室の関係者及び女子大学に在籍している障害学生へインタビューを実施した。その結果、インタビューから次のことが明らかにされた。第一に、近年、発達障害をもつ女子学生の入学が続いていること、第二に、発達障害も個別性があるため支援を求める学生と何度も面談を行い、個々のニーズに応じたきめ細やかな障害者支援(ノートテイク、情報保障、字幕付与等)や就職活動への支援を実施していること、第三に、情報保障に関する支援は、聴覚障害者や視覚障害者にも行われているが、より充実させるためにICTを活用した支援が求められていることが明らかにされた。以上のことから、女子大学の場合、一般の共学の大学と比較して決め細やかな合理的配慮が行われていることがうかがえた。さらに従来の障害学生への支援を、より多様な学生と共に学べるような教育環境の改善につなげるように工夫を凝らしていることも理解できた。これまで障害学生支援というと、「障害のある学生だけを特別に支援する」というイメージがあったが、現在の障害学生支援は障害のある学生のみならず、その周囲の学生にも波及できるものとなりつつある。 一方で、今年度の研究に課題も残されている。第一に、日米ともに障害学生の進学傾向をマクロで把握しようとしても限界があること、第二に、障害学生の卒業後の状況を全体的に把握しようと文献や統計資料を収集してみたが、日米ともに男女差があるのかどうか把握できない状況にあることである。この点については今後、長期的な課題から取り組んでいきたいと考えている。
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