研究課題/領域番号 |
26870468
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
佐藤 大介 宮城大学, 看護学部, 助教 (20524573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺がん / 遠隔看護 / QOL / 術後機能障害 |
研究実績の概要 |
本研究は、前立腺がんの手術後の患者にInformation and Communication Technology(以下ICT)を用いたTelenursing(以下TN)をベースとしたセルフケアプログラム教育を行い、その術後合併症の増悪予防効果を、比較対照試験で検証することを目的としている。前立腺がん患者の手術後の療養生活を送る上で合併症を軽減するための情報提供を目的で開発したTNを用いて、①対象者の日々の合併症の状態を遠隔地でモニタリングする。②合併症が軽減する生活習慣の調整やセルフケア行動についての情報提供および療養生活を送る上での疑問点、問題点に対する相談対応を実施する。プログラム開始後1か月、3か月に効果を測定する。介入による術後合併症の増悪予防効果をみるために、通常の診療を受けた患者を比較対象とする。主要エンドポイントは、手術後の合併症の増悪予防効果を手術前のベースラインから手術後1か月、3か月後の変化量で評価する。通常の診療を受けた患者を対照群として比較対照として、TNを受けた介入群の術後合併症の増悪予防効果を測定する。測定項目としては、自記式質問紙である【EPIC】と【ストレステストによる腹圧性尿失禁の評価】とする。副次エンドポイントとしては自記式質問紙である【FACT-G】を用いて評価する。これらの測定は、ベースライン、プログラム開始後1か月と3か月で行う。必要標本数の算定は、治療後対象者の80%が1年以内に合併症が改善すると報告されているため、TNの介入によって90%に改善すると仮定し、有意水準5%、検出力80%、非劣性限界を10%で算出して、介入群・対照群を各32名とする。また研究同意をしていても、研究途中の脱落者を10%程度と見込み、各群4名追加し、最終的には介入群・対照群を各36名とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、前立腺がん患者の手術後の合併症に対する患者の負担感や思い、症状に対する具体的な対処方法を知るために、国内外の文献検討を実施した。その際、合併症を客観的に測定する自記式質問紙尺度も参考にしながら、TNの介入プログラム構築のための基礎資料を得ることができた。TN介入モデルは、1.患者の日々の合併症の状態を遠隔地でモニタリングする。2.合併症が軽減する生活習慣の調整やセルフケア行動についての情報提供および療養生活を送る上での疑問点、問題点に対する相談対応を実施するもので、システムの開発には、イーシェアソリューションズ株式会社に委託した。具体的な内容としては、患者が1日1回一定の時刻にネット端末に表示される質問項目に対して、選択肢の中から回答し、サーバーへ送信する。その内容は治療に伴う合併症の症状をネット端末画面から回答する。その後TNでは、送信されてきたデータを即時モニタリングし、各質問項目にトリガーポイントを事前に設定をしておき、トリガーの該当項目があれば、その症状が軽減するための生活習慣の調整や具体的なセルフケア行動について情報提供する。患者には、排尿状態、性機能障害、ホットフラッシュの有無、睡眠障害の有無、鼠径ヘルニアの有無、対象者が測定している場合は、血圧、脈拍、体重、合併症の軽減に必要な知識として骨盤底筋体操、肥満、便秘予防、薬物療法、食事について確認できる項目を作成した。 以上のことから、初年度に計画していた文献検討およびシステムの開発はできたため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度(Phase1)は、予定していた内容が進んだため、平成27年度についてはPhase2として、A県内のがん専門病院および大学病院にて通院中の前立腺がん患者を対象に、ランダム化比較試験により、TNの支援を受けた群と通常の診療を受ける群の、合併症の増悪予防効果及びQOLの変化を測定しPTNの効果を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に計上していた人件費は、専門的知識の提供として謝金を支払う予定であったが、ご厚意で支払わない状況となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
介入を実施する上では、対象となる患者へICTのツールとなるタブレット端末を貸与する予定であり、その際インターネット通信費がかかるため、そちらの経費として使用予定である。
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