研究課題/領域番号 |
26870472
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
得平 茂樹 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90548132)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオ燃料 / 形質転換 / 微細藻類 / 制限修飾系 / メチル化 |
研究実績の概要 |
光合成効率の高い微細藻類は、植物に替わる新たなバイオマス資源として注目されている。その中でも、すでに産業利用され大量培養系が確立しているシアノバクテリアArthrospira platensis(スピルリナ)は、実用化に最も近い微細藻類の1つである。しかし、自然界に存在するスピルリナでは、バイオ燃料の原料として利用できるだけの生産性が得られていない。そこで、本研究では、スピルリナの遺伝子操作技術を確立し、世界で初めてスピルリナの遺伝子工学、代謝工学を行う。これまでの研究で開発したシアノバクテリアの糖代謝制御技術をスピルリナに応用し、醗酵原料となるデンプンの生産性を向上させたスピルリナを作り出すことを目指す。 スピルリナの形質転換において最も問題となるのは、外部から導入したDNAを切断する制限修飾系の存在である。スピルリナは10個以上の制限酵素を持っており、DNAを導入するためにはまずこれらの制限酵素による切断からDNAを保護する必要がある。昨年度までに、大腸菌に11個のメチル化酵素遺伝子をクローニングし、スピルリナ型にDNAをメチル化する菌株の作製に取り組んだ。しかし、これらの株において、メチル化酵素の発現および予想した形でのDNAのメチル化を確認できなかった。そこで今年度は、ゲノム情報から予想されたスピルリナの全タイプII制限酵素認識配列を除去したプラスミドを作製し、そのプラスミドを形質転換に用いることにした。大腸菌内でのDNAのメチル化が必要でなくなったため、形質転換は接合ではなく、エレクトロポレーション法で行った。エレクトロポレーション法に変更したことで、スピルリナに多数あるタイプI制限酵素の阻害剤を同時にスピルリナ細胞内に導入することができるようになり、より効率が高くなると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、メチル化酵素を大腸菌内で発現させることで、スピルリナ型にメチル化したDNAを作製できると考えていた。しかし、メチル化DNAの作製が容易ではなかったため、制限酵素認識配列を除去したプラスミドを作製し、エレクトロポレーション法により形質転換を行うこととした。この方法では、タイプIIだけでなくタイプIの制限酵素からもDNAを保護できるため、当初予定していた方法よりも効率が高くなることも期待できる。しかし、エレクトロポレーション法の最適化には、考慮すべきファクターが非常に多く、その条件検討に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、エレクトロポレーション法の最適な条件の検討を進める。また、当初計画していた接合によるDNA導入法も試すため、制限酵素認識配列を除去したプラスミドに接合に必要な配列を付加し、エレクトロポレーションだけでなく、接合による形質転換も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は研究方針の変更による研究の停滞が若干あったため、予算の執行にも影響が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度において研究方針を立て直すことができたため、今年度は強力に研究を推進する。エレクトロポレーション法による形質転換には、高価な試薬・消耗品が多く必要なため、繰越金はそれらの購入に充てる。
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