本研究は乳幼児をもつ母親の子育て観や子育て状況と、地域のソーシャルキャピタル(人や社会のつながり)との関係を探索し、地域特性を踏まえた子育て支援の方策を検討することを目的とする。 平成28年度はSCの差が予想される国内3地域(高SC地域として島根県、低SC地域として東京23区、その中間地として石川県)にて、認可保育園、幼稚園、子ども園の2歳児3歳児クラスの母親を対象として無記名自記式質問紙調査を実施した。各地域での回収率は約50%で回収数は230、204、190だった。SC指標のうち、助け合いと地縁的活動は3地域で有意な差を認め、双方とも島根県>石川県>23区であった。高SC地域の島根県において、近所で互いに助け合っていると思わず、かつ地縁的活動に参加していない母親は、近所とのつながりを求めていることが自由記載の分析から見出された。またSCと子育て観との関係を地域別にみたところ、島根県において、信頼、助け合い、地縁的活動が子育て観と有意に関係していた。さらに、本研究では子育て期のSCとして「おさがり」文化に着目した。おさがりはお互い様の精神によりなされ、子育て世代のつながりを保つと考え、おさがりのやりとりについてSC指標との関連を検証した。石川県において、「おさがりをもらう」「おさがりをあげる」ことはSC指標と有意な関連があり、子育て期のSC指標の可能性が示唆された。この結果については、文化看護学会第9回学術集会にて発表した。
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