研究課題/領域番号 |
26870486
|
研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
岡野 恵司 都留文科大学, 文学部, 講師 (70454022)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ペアリングを用いた公開鍵暗号系 / 楕円曲線 / 埋め込み次数 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究は,楕円曲線のペアリングを用いた公開鍵暗号系の研究に携わった.現在,理想的条件であるρ=1となる(すなわち楕円曲線の有理点群が素数位数をもつ) pairing-friendly 楕円曲線の完全族は,ただ一つの例しか知られていない(BN曲線族とよばれる). 新たな例を探すため,次の研究を行った.(a)「埋め込み次数が小さい場合について,ρが 1 となる条件を完全に決定する」.固定した埋め込み次数に対して,適当な代数体を選ぶことにより pairing-friendly 楕円曲線の完全族を構成する Brezing-Weng による構成法には,埋め込み次数以外にも,虚二次体の判別式や体の定義多項式がρの決定に関与する.標準的な構成方法としては,計算が容易ということもあり,体の定義多項式として円分多項式を採用した「円分的」完全族が考察されている.しかし,上記の理想的な楕円曲線の完全族は「非円分的」な完全族である.ρ=1の具体例を探すには,非円分的完全族を調べることは避けられない.本年度の目標の一つは,埋め込み次数が小さい場合についてこれらを精密に計算することにより,最適判定条件であるρ=1となる条件を決定することであった. 研究の結果として,埋め込み次数が k=3,4,6 及び 8,12に対して,「非円分的」な場合を含めた相当多くの場合について,「ρ= 1とはならない」ことが証明できた.これはBN曲線族以外に,少なくとも実装可能な族でρ=1となるものは存在しないのではないかという予想をたてる根拠になりうる.特筆することとして,上記のBN曲線族は埋め込み次数12のときであるから,この結果は興味深い. 上記の結果は,現在,学術論文として作成中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時における初年度の達成目標は,(a)「埋め込み次数が小さい場合について,ρが 1 となる条件を完全に決定する」の他に,(b)「ρが1に近い値をとるような,埋め込み次数をパラメータにもつ定義多項式の系列の構成研究の足掛かりを見つける」ということであった.
(a)の目標はおおむね達せられた.特に今まで理論的結果が少なかった,円分多項式以外を定義多項式として用いる非円分的構成法において,新しい結果が得られた. しかし(b)については,既知の結果を上回る様な構成を見出すことが未だできておらず,当初の目標を完全に達成できたとはいいがたい.ひきつづき次年度で完遂を目指す.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,去年度に続き楕円曲線のペアリングを使った(b)「ρが1に近い値をとる楕円曲線族の構成研究」を続ける.しかし,これ以上の進展が期待できないようであれば,研究対象を超楕円曲線にまで拡張し,第三の目標であった(c)「超楕円曲線に対し,現在得られている ρ の最良値がベストなものか調べる」という研究を開始する. また,研究集会へも積極的に参加して,アドバイスやアイデアの獲得に努める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,初年度ということもあり,研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり,学会などへの出張が当初の予定より少なくなったことがある.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と次年度以降に請求する研究費を合わせた金額の使用計画としては,研究図書の購入を増やすこと,学会参加や共同研究者との研究打ち合わせのための旅費に使用すること,そして論文の英文校正依頼のため謝金にあてることなどを計画している.
|