研究実績の概要 |
様々な埋め込み次数に対して構成されるペアリングに適した楕円曲線の完全族について,理想的条件である ρ=1 となるものがあるかという問題を研究した.2015年度は前年度の「埋め込み次数が小さい場合について,ρが 1 となる条件の決定」に関する結果:埋め込み次数が 3,4,6 の場合にはρは 1 とならないこと,および 8,12 に対して非円分的な場合--構成の際に使う体の定義多項式として円分多項式を用いない場合--を含めた多くの場合についてρは 1 とならないことの2つを論文にまとめ,査読付き論文雑誌に投稿した.またこの結果に関する研究発表として,2015年12月に第11回「代数学と計算」研究集会 (AC2015),2016年3月に日本応用数理学会・研究部会連合発表会で講演を行った.今後の研究課題としては,以前の論文において技巧的理由により付けざるを得なかった仮定を外すことがある.これができれば,少なくとも円分多項式を用いた構成に関してはρは 1 になり得ないのではないか,という予想の数学的根拠および多数の具体的証拠になり得る. さらに進んだ研究として,「様々な埋め込み次数に対して,ρが十分 1 に近い値をとるペアリングに適した楕円曲線の完全族の構成」の研究に取り組んだ.既に知られている完全族から同様の完全族を構成する(例えば Barreto-Naehrig 曲線族から似たような曲線族を構成する)方法の手がかりを得たが,現時点ではまだ十分な応用と満足できる一般的拡張が得られておらず,今後は応用方面と計算機学に詳しい研究者と共にこの研究を進めていく予定である.
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