研究課題/領域番号 |
26870487
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
唐木 晋一郎 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00363903)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 消化管ケミカルセンシング / 経上皮イオン輸送 / Ussing chamber / viniferin / 腸粘膜バリア機能 / 短鎖脂肪酸 / GPR41 / FFA3 |
研究実績の概要 |
消化管粘膜上皮に対する化学刺激物質候補として resveratrol の二量体である ε-viniferin を Ussing chamber に装着したラット消化管粘膜の管腔側バスに投与したところ、一過性の短絡電流(Isc)、経上皮コンダクタンス(Gt)およびデキストラン(FD4)透過性上昇が惹起されることを見出し、最も反応性の高かった盲腸粘膜組織を用いてその作用機序を検討した。その結果、管腔側 ε-viniferin の惹起する Isc 上昇は、COX-1 によるプロスタグランジン(PG)産生と、EP4 PGE2 受容体を介することと、Gt 上昇には TRPA1 チャネルが一部、関与することを見出した。ラット盲腸粘膜を COX-1 特異抗体を用いて免疫染色した結果、上皮細胞の一部に免疫活性がみられたことから、この細胞が管腔側の ε-viniferin を受容し、PG を産生する管腔内化学受容細胞ではないかと考えられた。さらに、以前の研究から、腸内細菌代謝産物として、大腸内に豊富に存在する短鎖脂肪酸の管腔側刺激によっても、一過性の Isc および Gt 上昇が惹起されることが知られいるが、管腔側 ε-viniferin は、炭素数 3 の短脂肪酸であるプロピオン酸の反応を濃度依存的に抑制することも見出した。このことから、大腸管腔内の化学物質受容と、その生理応答は様々な管腔内化学物質が相互作用していることが示唆された。本年度は特に FD4 透過性上昇による管腔内化学物質刺激による腸上皮バリアへの影響について検討した。 また、短鎖脂肪酸受容体 GPR41およびGPR43-KO マウスと野生型マウスの盲腸粘膜において、管腔側プロピオン酸の分泌応答性を測定したところ、GPR41-KOマウスで反応が消失したことから、この管腔内短鎖脂肪酸受容体はGPR41であることが確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、消化管の管腔内化学物質受容機構のシグナル伝達経路を明らかにすることを目的としているが、これまでに、そのひとつとして取り上げたε-viniferin の管腔側刺激による分泌作用および腸粘膜バリアに対する作用の一部を明らかにすることができ、論文としても発表することが出来た。さらに、最も主要な腸内細菌代謝産物である短鎖脂肪酸による分泌応答に関与する受容体が、GPR41 (FFA3) であることも確定させたことから、おおむね順調に進展していると考えている。しかしながら、より詳細な作用機序を検討するために構築を目指した二光子励起イメージング Ussing chamber システムによるデータはまだ十分に得られていない。また、ヒト検体でもε-viniferin はラットに似た作用を惹起することを発見したが、まだ十分な例数が得られていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、腸管粘膜を管腔側から刺激する管腔内化学物質としてε-viniferin を発見したことから、当初の予定を方向転換して、管腔側ε-viniferin の作用機序の検討を行ったため、当初計画していた①二光子励起イメージング Ussing chamber システムの構築と、②消化管における味覚・嗅覚関連分子の発現マップ作製に関しては遅れている。ε-viniferin の作用機序については、論文の発表によって一定の成果を発表することが出来たので、今後は当初の計画していた①、②についての検討を推進し、研究期間終了までにシステムの構築とマップの完成を目指している。また、今回明らかになった管腔内化学物質受容体のひとつ、短鎖脂肪酸受容体 GPR41 (FFA3) についても、その詳細な作用発現のシグナル伝達経路と発現分布についても解明を推進している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末において査読中であったろんぶんの掲載料の一部に充てる予定であったが、年度内にアクセプトされなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に投稿した論文の掲載料として使用する。
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