本研究では、立体映像視聴が生体に与える影響について研究を行っている。今年度は画像追従に着目し、視聴映像において、中心像のみとそれに背景画像を加えた映像を作成し、背景像の有無、中心像追従の有無が生体に与える影響について、研究を行った。実験では、被験者に実験前に実験の説明を十分に行い、書面にて了承を得た。 指標と背景の揺れとの関係が体平衡系に及ぼす影響について実証研究を行った。実験では、光トポグラフィによる脳血流量計測と重心動揺計測、視線追従を行った。計測は暗室で行い、実験姿勢は座位姿勢とした。実験では、70秒間の閉眼検査(Pre)の後、立体映像を追従視で70秒間視認、続けて周辺視で70秒間視認させた。この一連の流れを5セット続けて行った。 この結果、視認映像が背景なしの場合、Preと比較すると追従視時より周辺視時の酸素化ヘモグロビン濃度の値の方がより大きく変動した。しかし、視認映像が背景ありの場合では顕著な変動はみられなかった。これは、背景あり映像では画面の情報量が増え、視標以外へ注意散漫となするためと考えられる。また、背景の有無にかかわらず、Preと比較すると追従視時より周辺視時の方が後頭葉上部に酸素化ヘモグロビン濃度の増大がみられた。NVC(Neuro-Vascular-Coupling)を仮定すると、周辺視時において後頭葉上部の脳活動が亢進したといえる。これは、背側視覚路における脳活動が亢進したためと考えられ、立体映像酔いの機序を考えるうえで手がかりとなり得る。
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