近年、腸内細菌の状態が身体の健康に影響することはよく知られている。しかし、身体活動(運動)が腸内細菌叢にどのような影響を与えるかは明らかではない。また、抗菌ペプチドは外来菌の除菌メカニズムの中心的役割や腸内の恒常性を保つ役割を持つ。腸内環境と腸内細菌の変化は密接に関係しているため、運動時の腸内環境は健康(=コンディション)を左右すると言える。本研究の目的は、自発運動による腸内細菌叢の変化と抗菌ペプチドであるdefensinの変化について検討することである。 今年度は、これまでに行った腸内細菌叢のサンプルを次世代シークエンサーの結果による菌叢解析とKEGG pathwayの予測を行うことが出来、腸内細菌叢の変化を更に詳細に調査することが出来た。運動量とある菌種に正の相関関係が認められたことから、運動量が多いほどこの菌種が増加する可能性を示唆した。また、代謝においては運動によるエネルギー消費がTCAサイクルで増加することなどが、腸内細菌そのものの代謝機構からも明らかになり、宿主である生体の代謝に運動による腸内細菌の変化が関与することが示唆された。 一方で、食物繊維の投与による検討を行った。その結果、運動による腸内細菌の変化には再現性があることが確認された。また、食物繊維の投与によって腸内細菌叢そのものに大きな影響は及ぼさないものの、腸内環境を整えることによって、運動による種々の効果を助ける働きをすることを示唆した。
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