以下では,研究計画調書に記載した研究課題【1】~【4】に関する研究実施状況について述べる.課題【2】および【4】は昨年度に飛躍的な進展があったため,本年度は課題【1】および【2】の研究を遂行した.課題【1】に関しては昨年度に引き続き大規模な数値解析を実施中であったが,課題【3】に関して以下で示す重要な発見があったため,課題【1】の解析を中断して,課題【3】にエフォートを割いた.以下では主に課題【3】に関して得られた成果を報告する. 課題【3】に関して,前年度に明らかにした2成分超流体の秩序化過程における浸透理論と無限欠陥の統計則に関する研究成果を,古典および量子流体の非平衡物理に関する国際会議「NEQFLUIDS2016」および統計物理学に関する国際会議「STATPHYS2016」,原子物理に関する国際会議「ICAP2016」において研究発表を行った.また,2016年9月に開催された日本物理学会秋季大会においても口頭発表を実施した.国際会議「STATPHYS2016」において,統計力学の分野の研究者との研究交流をきっかけに,課題【3】に関して新たな方向性が見出され,前年度に学術論文として出版された相分離する2成分超流体におけるドメインサイズ分布の研究を発展させた.その成果は,このサイズ分布には浸透理論によって普遍的に記述される巨視的スケーリング領域と,ドメイン壁の微視的ダイナミクスに依存する微視的スケーリング領域が存在することが明らかになったことである.得られた成果については,量子科学に関する国際シンポジウム「QSS2016」にて招待講演を行い,2017年3月に開催された日本物理学会年次大会で口頭発表を行った.この問題は学術論文(arXiv:1703.10581)として投稿が完了し,現在査読中である.
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