研究課題/領域番号 |
26870501
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松原 勤 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20628698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝星細胞 / 胆汁酸 / 細胞老化 / 肝硬変 / 胆汁酸受容体 |
研究実績の概要 |
C型肝炎背景肝がん患者の非がん部の遺伝子変化、非アルコール性脂肪肝炎患者の肝臓の遺伝子変化と脂肪肝炎マウス肝の遺伝子変化の3者間を比較検討して、脂肪肝炎背景肝がんの分子病態を解析し、本年度は非実質細胞の中でも肝星細胞に着目して以下の実験を行った。 (実験1)マウス肝から肝細胞、肝星細胞、その他の細胞群で単離し、FXR発現量を比較すると、肝星細胞が、肝細胞の4倍量のmRNAを発現し、最も発現していることが分かった。そこで、初代培養マウス肝星細胞にFXR活性化剤であるGW4064を添加すると、肝星細胞活性化で発現上昇するαSMA、COL1A1発現が減弱した。初代培養系ヒト肝星細胞 (HHSteC, ScienCell社) にも同様にGW4064を添加すると、αSMA、COL1A1発現が減弱し、FXR活性化は、肝星細胞の活性化を抑制して肝硬変・肝がんの進展に作用し得ることが推定された。 (実験2)HHSteCに主要5種の胆汁酸、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸(LCA)、ウルソデオキシコール酸を添加すると、LCAのみ、αSMA発現を減弱させ、肝星細胞脱活性化の指標の一つであるPPARγ発現を増強した。また、胆汁酸由来FXR活性化物質であるオベチコール酸(6-ECDCA)の添加では、LCAのような現象は観察されなかった。興味深いことに、胆汁酸類似物質(胆汁酸Aから胆汁酸Cの3種)を添加すると、胆汁酸AはLCAより低濃度で、αSMA発現を減弱させ、PPARγ発現を増強させた。 (実験3)肝星細胞の細胞老化は肝発がんに寄与することが示唆されている。HHSteCにGW4064を添加すると、細胞老化で上昇してくる遺伝子のうちの複数個の遺伝子の発現を抑制することが分かった。現在、詳細を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
米国国立衛生研究所の組織特異的FXR欠損マウスの交配が予定よりも遅れたため、大阪市立大学医学部動物飼育施設で組織特異的FXR欠損マウスの交配を開始したが、マウス実験系を実施するに十分な頭数が得られていない状況。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果であるマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析結果から肝発がん関連遺伝子とFXR関連遺伝子を同定する。 また胆汁酸類似化合物に肝星細胞の活性化を抑制する作用を見出したので、特許取得を目指すとともに、その分子機序を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の開始が遅れているため差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験が遅れることも想定して研究計画を立てた。次年度に繰り越して動物実験を実施する予定である。
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