半円柱状の根をもつHydrobryum subcylindricumおよびH. ramosumを観察したところ、根端の中央にシュートが形成され、それに伴って根が二叉分枝を起こしていた。帯状の根をもつH. taeniatumでも同様に根端の中央にシュートが形成されていた。一方H. subcrustaceumの根は、帯状から扇状の形態を示し、根がくびれを生じる場所にシュートが形成されており、分枝に規則性が見られた。近縁種のCladopus属では根の分枝とシュートの形成位置に規則性が見られることから、これらの根では分枝様式が祖先返りしていることが示唆された。一方で、半円柱状の根をもつH. subcylindricumおよびH. ramosumの根端分裂組織は、根冠を失っており、近縁種のCladopus属のような背腹性は見られなかった。従って、分裂組織構造は祖先帰りを起こしていないと推定された。新たに採集したサンプルを系統解析した結果、Hydrobryum属において葉状から半円柱状への根の進化は3回起こったと推定された。 ラオス北部で野外調査を行い、分子系統解析および形態観察によって、そのうち7種が新種と推定され、2種が新属新種であった。そのうちの1種は帯状の根から軸状の器官を束生するが、その器官は根、茎、葉のいずれの器官とも異なっており、相同性が不明であった。もう一方は、根をもたないHydrodiscus属の姉妹群に位置したが、葉状の根をもっていた。従って、Hydrodiscus属が分岐した時に葉状の根の消失が起こったと推定された。ラオス南部でも野外調査を行い、そのうちの1種は、根が内生分枝をしているにもかかわらず、シュートと明確な関連が見られ、これまでに知られていない根の分枝パターンであった。また、タイで野外調査を行い、葉状の根をもつ1種を新種として論文投稿した。
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