研究課題/領域番号 |
26870506
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
石坂 朱里 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (30724463)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリフェノール / フラボノイド / ケルセチン / モノクローナル抗体 |
研究実績の概要 |
ポリフェノールの1種であるケルセチンは、吸収代謝の後に抱合体へ変換(解毒)されて生体内に存在するが、その一部は局所的に脱抱合されて生理活性の強いアグリコンになると考えられる。アグリコンの生体内局在部位が明らかになれば、ポリフェノールの活性発現メカニズムの解明につながると期待される。 ケルセチンアグリコン(QUE)はin vitroにおいてタンパク質チオール基と結合する。in vivoにおいてもタンパク質付加体になると考えられるため、本構造を認識するモノクローナル抗体の作製を試みた。チオール基をもつ3-メルカプトプロピオン酸(3MPA)を酸化的にQUEに結合し、3MPAのカルボキシル基とキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)のアミノ基をカルボジイミド結合することで抗原(QUE-3MPA-KLH)とした。マウスに投与後、抗体価の上昇を確認し、脾臓細胞とミエローマ細胞を融合してハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマ産生抗体のスクリーニングを行った結果、本抗体はウシ血清アルブミン(BSA)を認識せず、QUE-3MPA-BSAを顕著に認識した。しかしながら、酸化的条件下で結合させたBSA-QUE、および遊離(タンパク質が結合していない)QUEはほとんど認識しなかったことから、QUE-3MPA構造を認識する抗体が作製されたと考えられた。並行して、QUEの腸内細菌分解物である3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)の抗体作製も試みた。DOPACのカルボキシル基とKLHのアミノ基をカルボジイミド結合したものを抗原とし、上記同様に検討を進めて、ハイブリドーマ産生抗体をスクリーニングした。その結果、BSAを認識せず、DOPAC-BSAを顕著に認識する抗体が得られた。しかしながら、遊離DOPACはほとんど認識しなかったことから、DOPACとKLHのカルボジイミド結合部位までを認識する抗体が作製されたと考えられた。今後は、改良を加えた抗原を用いて抗体作製を再度試みる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モノクローナル抗体の作製において、抗原構造を顕著に認識する抗体が得られた。しかしながら、生体内に存在するケルセチンアグリコンあるいはケルセチン分解物の免疫化学的評価に利用するには、改善が必要と思われた。現在は、抗原を新たに作製している段階であり、当初の到達目標からやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)抗原構造を改良し、ケルセチンを認識するモノクローナル抗体の作製を引き続き試みる。生体内に存在するケルセチンの免疫化学的評価につなげる。 (2)当初の計画通り、実験動物における脱抱合酵素(グルクロニダーゼ、スルファターゼ)の活性発現部位を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度中にモノクローナル抗体の精製や特異性解析まで至らなかったため、これらに必要な費用はH27年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度中に、新しく作製した抗原を用いてモノクローナル抗体を樹立し特異性解析を行うことで、繰越分を使用する予定である。
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