星や惑星の普遍的な形成過程を明らかにするためには、形成過程にある若い星の正確な年齢を決め、議論を行うことが非常に重要である。一般的に星の年齢は、星の温度と光度を星の進化モデルと比較することで求めるが、若い星は分子雲に埋もれており、かつ周りに原始惑星系円盤があるため、光度決定が困難である。本研究では、若い星の表面重力を、高分散分光観測による独自の手法で求め、これをもとに年齢を決定し、星や原始惑星系円盤、惑星の形成過程の理解を深める。この手法は、分子雲による減光や、原始惑星系円盤からの質量降着に伴う増光などに依存することなく、若い星の物理量を得ることができる。 本年度は、星の進化モデルの検証を行うため、連星系の近赤外線高分散分光観測を行った。若い星の進化モデルは複数存在し、それぞれで導かれる年齢が異なるため、モデルの検証を行う必要がある。この検証に適しているのが連星系である。連星系をなす星の年齢は等しいため、モデルの検証に適している。これまでにおうし座分子雲に属する11個の連星系の観測を行った。この結果から連星系の物理量を正確に決め、それぞれの進化モデルから導かれる年齢をもとに、モデルの検証を進める。 本年度はFU Ori型星の高分散分光観測も行った。FU Ori型星は、原始惑星系円盤からの質量降着率が大幅に増大し増光する現象で、原始惑星系円盤の進化を理解する上で重要な天体である。本研究では2014年度に増光したV960 Monの分光モニター観測から、FU Ori型星の増光時の原始惑星系円盤の温度・重力変化を捉えることに成功していたが、これを具体的に調査するためにすばる望遠鏡を用いた高分散分光観測を行い、吸収線の強度だけでなくそのプロファイルが大きく変化していることがわかった。現在は、この結果を用いたFU Ori型アウトバーストに伴う星と円盤の進化に関する論文の準備を進めている。
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