研究課題/領域番号 |
26870512
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
寺嶋 光春 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60706969)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 嫌気性消化 / 無機物析出 / ダイナミックモデル |
研究実績の概要 |
嫌気性消化プロセスは下水処理場で発生する廃棄物系バイオマスである余剰汚泥を減量しつつメタンガスを回収する技術である。余剰汚泥中に含まれるリンは嫌気性消化反応で液中に放出され、Caイオンをはじめとする水中の陽イオンと結合し、難溶性のリン酸塩として固定される。 本年度はK市H下水処理場の嫌気性消化槽から採取した嫌気消化汚泥を種汚泥とし、2Lの槽を用いてK下水処理場の余剰汚泥をHRT=25日で供給した中温消化の連続実験を100日間に亘っておこなった。無機イオンの添加により意図的に溶解性リン濃度を低下させた。 国際水協会(IWA)の活性汚泥モデルを嫌気性消化反応に拡張し、余剰汚泥の嫌気的自己消化によってリン、重炭酸やCaイオン等が一定比率で生成すると見なした。さらに、無機物の析出反応モデル化としては、Ca-P塩の反応において熱力学的に最も不安定で溶解度積が最も高いCaHPO4・2H2Oが最初に析出し、次第にCaHPO4を経てCa3(PO4)2に変化すると仮定した。また、CaCO3の反応は、その溶解度積に従ってCa-P塩の反応と独立したモデルとした。 計算の溶解性成分濃度は実測値とかなりよく整合しており、作成のモデルで反応挙動を説明できると考えられた。運転経過やCaCl2の添加条件に従って変化する析出固体の種類の推定も可能であった。本モデルによって嫌気性消化槽の運転条件によって消化汚泥に固定されるリンの比率や脱離液として流出してしまうリンの量を制御できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嫌気性消化プロセスにおける主たるイオン種の結晶析出の挙動を熱力学的及び反応速度論的にモデル化し、溶解性成分の実測値を良好にシミュレーションすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
高マグネシウム、高アンモニア濃度の条件で連続実験の行い、ヒドロキシアパタイト (HAP) やストラバイト (MAP)の固体種も考慮したモデルを構築する。これにより嫌気性消化槽における最適なイオン添加リン除去プロセスを検討できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用予定であった物品を他予算で購入したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度物品購入に使用予定。
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