昨年までに10%フルクトース水の24週間摂取によってNASHには至らないが肝臓への炎症細胞の浸潤を確認した。本年度は、昨年度の再現性確認の実験ならびに肝臓中の遺伝子発現解析を行った。その結果、今年度の結果でも前年度と同様に10%フルクトース水摂取により血液生化学検査値の変化やNASHの発症は確認されなかったが、肝臓中での炎症が確認された。有意差は認められないものの、生殖器周囲の脂肪重量、肝臓中の総脂質量等は増加する傾向が確認された。遺伝子発現解析では、84遺伝子が搭載されたRT2 Profiler PCR array (Mouse Fatty Liver)を用いて解析を行なったが、顕著な発現変動は認められなかった。 本研究では清涼飲料水程度の濃度でフルクトースの日常的摂取がNASHの発症に及ぼす影響について検討したが、今回の実験条件ではNASH発症には至らないことを確認した。今回の飲水量、摂食量から1日の摂取エネルギー量に対する単純糖質の摂取割合を算出すると約15%であり、WHOの推奨する1日の摂取エネルギー量に対する単純糖質の摂取割合よりも多い条件であった。この程度の摂取量では体重増加やヒトの診断で一般的に測定される血液検査の値には影響を与えないものの、肝臓中での炎症細胞の浸潤が確認されたことから、清涼飲料水程度のフルクトースの日常的な摂取が及ぼす影響については、今後も検討する必要があることが示唆された。
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