発達性ディスレクシア(以下、DD)とは、視覚や聴覚といった感覚障害や知的発達障害、学習機会の剥奪がないのも関わらず、読みの習得・利用の障害を示す学習障害の1つである。本研究は発達性ディスレクシアの障害を理解するための、認知神経科学的な視点からの基礎的資料を提供することである。 H30年度は、語い判断課題(音韻付加型)を行い、平仮名の読み過程におけるDD児と定型発達(以下、TD)児の脳活動の比較を行った。参加者はDD児23名(女児3名)、TD児28名(女児6名)であった。なお、DDの診断はWISC知能検査でIQが85以上、かつ音読検査の音読時間が学年平均時間から2標準偏差以上の延長が、2つ以上の課題で認められた児童・生徒とした。TDは非言語性知能を評価するレーブン色彩マトリックス検査で当該学年の平均範囲内であり、かつ音読検査にて音読時間の延長が認められない児童・生徒である。課題では、仮名文字列を呈示して、最後に「ん」を付加した際に、単語になるか否かを判断させた。解析の結果、単語に対する脳活動では、左紡錘状回の活動がTD児はDD児に比べ、活動が高くなっていた。非語に対する脳活動では、左紡錘状回に加え、中・下後頭回の活動がTD児はDD児に比べ、活動が高くなっていた。本研究の結果から、紡錘状回は単語認知に関連する領域として、一方で中・下後頭回は日本語の仮名文字を音への変換するために重要な領域として、それぞれ知られており、これらの領域での活動がDDにおける読みの困難さに関連すると考えられた。
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