研究課題/領域番号 |
26870519
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
櫻庭 奈美 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教 (90709213)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症 / がん看護 / がん疼痛 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】本年度は、認知症を伴う高齢がん患者に対して看護師が行っている「がん疼痛マネジメント」の内容と過程明らかにすることを目標に、まず文献検討を主として行った。 【方法】分析対象論文は5つのデータベース(CINAHL、J-DreamⅡ、医学中央雑誌、DiaL、最新看護索引)と3つの学会誌(日本がん看護学会誌、日本看護科学学会誌、老年看護学会誌)から検索した。検索文献は2014年までとし認知症を伴う高齢がん患者の疼痛マネジメントの現状およびケア内容に焦点を当てている文献について国内外の現状を調査した。 【結果】調査結果より、がん疼痛マネジメントにおいて言語的・非言語的コミュニケーションを通して患者の主観的な痛みをアセスメントすることへの困難さが示唆された。また、認知症を伴う高齢がん患者の痛みは、看護師に臨床経験や臨床での体験、病棟文化といった外的要因や客観的指標も必要であり外的要因も看護師の判断に影響を与えていることが示唆された。 一方で、看護に関連した先行研究を概観すると国内では事例研究が主であり、事例研究の内容を掘り下げてがん疼痛マネジメントにおける課題を明らかにする必要性も示唆された。研究の焦点は、「周辺症状に関連した看護師の困難感」、「患者の意思決定における課題」であった。これらは、認知症を伴う高齢患者と同様であるが、がん医療における特徴を踏まえて分析、結果を論じている文献は少ない。さらにがん疼痛マネジメントを定義して論じている文献も少ない。以上より、看護師が認知症を伴う高齢がん患者に対して行なっている「がん疼痛マネジメント」を事例における事象を関連性を踏まえ分析し作業的定義を行い、インタビューガイドを作成した。これをもとに来年度は、実際にインタビューを行い、分析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的は、認知症を伴う高齢がん患者に対して看護師が実践する「がん疼痛マネジメント」の内容と過程を明らかにすることである。
昨年度は文献検討と3名のインタビューを行った。文献検討では、認知症を伴う高齢がん患者に対するがん疼痛マネジメントにおける看護師の役割と付随するケア上の課題がが示唆された。半構造化インタビューではがん疼痛マネジメントの実際について尋ねた。そこで、がん疼痛マネジメントのプロセスが示唆されたが、がん疼痛以外の諸症状に対するアセスメントと介入が連続的に行われており、がん疼痛マネジメントに限ったデータが得られにくい可能性が示唆された。そこで、「がん疼痛マネジメント」の操作的定義をインタビューも含めて定義し直し、再度インタビューガイドを作成中である。さらに、認知症を伴う高齢がん患者は、がん拠点病院ならず在宅や地域療養病院、高齢者施設といった複数の施設に入院、生活していることが多い。加えて、患者選定に際しては、認知症の診断がついていない患者が多く、さらに脳転移やせん妄、うつ病の否定ができる患者を選定することが困難であることなどから多少難航している経緯がある。 しかし、計画段階において、これらの状況は想定していた範囲内の状況であり、地域を問わずにがん疼痛マネジメントに携わったことのある看護師を対象とするため、研究期間に多少の余裕を確保している。よって27年度の上半期までにインタビューは終了し、分析を行う予定としており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は上半期に、訪問看護ステーション、がん拠点病院、総合病院など病院や施設を限定せずに認知症を伴う高齢がん患者のがん疼痛マネジメントに携わった看護師を選定し、インタビュー調査を引き続き行う予定である。その後、調査と並行して質的データの分析と統合を進めていく予定である。研究時間の不足により計画が遅延することを防ぐためにインタビューデータの逐語反訳を業者に委託するなどして、スムーズに分析過程にすすめるよう対応していく。
インタビュー対象者の依頼段階において、現在はA市内を中心に「認知症を伴う高齢がん患者のがん疼痛マネジメントの経験」がある看護師を紹介していただいているが、この条件を満たす対象者数を増やしていくために、A市外、道外にも依頼先を広げていく必要があると考えている。分権検討、質的データの分析により導き出された結果は、学会発表の場を用いて公表し、報告書の作成し研究協力者への配布を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献検討により「がん疼痛マネジメント」の内容と過程が示唆されたが、過程をより明らかにし、操作的定義を行うためには追加のインタビューが必要となった。さらに、それに基づいてインタビューガイドを作成したが、インタビュー対象者の確保に難渋し、当初の予定よりインタビュー回数が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
インタビュー対象者を拡大し、対象者増加を狙う。また遠方の看護師や施設にも協力をお願いし、施設の偏りがないデータを収集できるように工夫する。
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