研究課題/領域番号 |
26870524
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
小野寺 敏幸 東北工業大学, 工学部, 講師 (10620916)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ガンマ線検出器 / 化合物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究で目指している臭化タリウム(TlBr)結晶を用いた高性能な線量率計を実現するためには、高品質なTlBr結晶を得ることが不可欠である。平成26年度は、高品質はTlBr結晶を育成するための検討を集中的に進め、平成27年度実施予定のTlBr結晶の大口径化に向けた基礎検討を行った。 TlBr結晶の高純度化に用いられる精製法には、帯域精製法、真空蒸留法、フィルタ法などがある。本検討では、同一の試薬(純度99.99%)に対してこれらの精製法を個別に実施した。さらに育成したTlBr結晶を用いてガンマ線検出器を試作し、ガンマ線スペクトル特性を評価することでTlBrに対する各精製法の効果を検証した。検討の結果、真空蒸留法は帯域精製法を十数回実施して得られる効果と同等であり、精製期間の短縮化に有効であることが分かった。フィルタ法は、上記の精製法と比較すると効果が低い傾向が見られたが、他の方法と比較すると最も簡便な方法であり、低純度原料の初段の精製には有効であることが分かった。 従来の育成法(TMZ法)では、高品質なTlBr結晶は得られるが育成炉の構造上、得られる結晶は半月型となり、大口径化には実用的ではない。育成する結晶の大口径化には、育成法が簡便であるブリッジマン法が一般的であるが、育成前にアンプル内の材料を全て溶融してしまうため、本研究のような精製工程で得られるTlBrのように長さ方向に対して不純物の濃度分布をもつ材料には不適であると推測した。そこで、本研究では、精製したTlBrを封入したアンプルを水平方向に移動する従来のTMZ法に対し、移動方向を垂直方向とした縦型TMZ法を試みた。検討の結果、縦型TMZ法で育成した円筒状のTlBr結晶は、従来のTMZ法で得られた結晶と同様に概ね成長方向に対して特性が変化していたことから、精製による不純物の濃度分布を維持していると推測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、新規の高感度線量率計を実現するためには、TlBrが不可欠であると位置づけている。高性能なデバイスを製作するためには、高品質なTlBr結晶を得る精製法および育成法を製品化までを視野に入れて検討すべきである。したがって、平成26年度は、線量率計の本格的な検討までは進まなかったが、結晶育成の初期検討を重点的に取り組み、高品質化と大口径化につながる成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、昨年度得られた結晶育成の成果をもとに実際にΦ1inchのTlBr結晶を育成し、検出器の評価を進めていく。結晶径の拡大によってもTlBr結晶の品質が維持されることを確認した上で高エネルギ分解能を示す検出器の製作に臨みたい。また、検出器の特性を踏まえ、精製および結晶育成の工程を適宜見直すこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、TlBr結晶の精製と育成工程の初期検討を集中的に実行した。実験条件を細分化し進めることが想定されたため、実験ごとの原料の使用量を抑えた結果、原料費の支出が減少した。また、優先して結晶育成の検討を優先的に進めたため、デバイスの試作に関わる費用が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、結晶育成と同時進行でデバイスも試作していく計画であり、昨年度の残額分を有効に活用し成果につなげていきたい。
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