研究課題/領域番号 |
26870527
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
立田 岳生 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (70438563)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リボヌクレアーゼ / 抗がん作用 / 分子生物学 |
研究実績の概要 |
本年度は,(1) 種々のRNaseリコンビナントタンパク質作製の効率化,(2) SBL および他の RNaseの抗腫瘍作用に関わるレセプター様分子の探索に焦点を当て研究を行った. (1) に関しては,SBL と ONC のリコンビナント作製条件を最適化し,ともにペリプラズム移行シグナルを用いた発現系が適していること,また SBL は 発現用大腸菌として BL21 (DE3) pLysS 株を利用し,培地画分から可溶性体を回収することが最も効率が良い一方で,ONC は BL21 (DE3) 株を利用し,不溶性画分から denature,refold することが最も効率が良いことを明らかにした.さらに,RNase をラベルするための Cys 変異体の作製も検討し,それぞれ同様の発現系が最適であることが分かった.カラム精製後の回収効率は SBL で ~1 mg / L (大腸菌培養) , ONC で ~10 mg / L となり,研究材料確保の観点から,SBL 作製のさらなる効率化は今後の検討課題と考える. (2) に関しては,(1) で得られた SBL (Cys 変異体), ONC (Cys 変異体) を Biotin でラベルし,それらの細胞に対する結合をキャラクタリゼーションした.その結果それらの結合は,細胞の Sialidase 処理により減少する一方で,グリコシルセラミド合成酵素の阻害では影響を受けないことから,シアル酸を含む糖タンパク質が RNase の殺細胞作用に関係する可能性が示唆された.さらに,ビオチンラベルトランスファー実験により,SBL および ONC が がん細胞表面に結合した際に,それらの近傍に存在するタンパク質の探索を行い.MS 分析の結果からいくつかの候補分子の同定に成功した. さらに,次年度に予定した研究 (悪性中皮腫に対する効果) にも着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度予定していた (1) 種々のRNaseリコンビナントタンパク質作製の効率化,(2) SBL および他の RNaseの抗腫瘍作用に関わるレセプター様分子の探索,に関しては予定通りに進捗し,2 種の RNase (SBL および ONC) のリコンビナントタンパク質の作製・確保に成功し,それらを用い,それら RNase のがん細胞に対する結合のキャラクタリゼーション,およびレセプター様分子の MS 解析まで進むことができた. さらに次年度に予定していた (3) アスベスト禍の問題で注目される悪性中皮腫細胞に対する抗腫瘍効果についても研究を始めており,SBL が悪性中皮腫に有効性を示すことを明らかにし,また,現在臨床で使用されるペメトレキセドとの併用効果,比較研究も進んでいる.さらに研究計画にある SBL 耐性細胞の樹立も進んでおり,そのキャラクタリゼーションが進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い,以下の (1) ~ (3) の研究を進行する. (1)種々のRNaseリコンビナントタンパク質作製の効率化に関しては,既に検討を終えたが,研究材料確保のため常にサンプル調製を進める.SBL に関しては収量が低いため,経済的に可能であれば,スケールアップが可能になるよう機材を用意する.(2) SBL および他の RNaseの抗腫瘍作用に関わるレセプター様分子の探索に関しては, 概ね研究目的を達成しているが,得られた結果を確認するための研究 (ELISA や蛍光顕微鏡による確認)を行い,論文発表に備える.(3) アスベスト禍の問題で注目される悪性中皮腫細胞に対する抗腫瘍効果に関しては, 予定通り耐性細胞の作製に成功しているので,そのキャラクタリゼーションや耐性機序の検討を行う.また既に数種の悪性中皮腫細胞および正常中皮由来細胞に対する SBLとペメトレキセドとの併用効果,比較研究も進んでおり,SBL がペメトレキセドよりもががん細胞へ選択性が高い可能性など明らかにしているので,さらに詳細な検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも研究の進捗が早かったため,大腸菌培養関連費,細胞培養関連費を節約することができた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究実績の概要および今後の方策欄に記載したように,今後も研究材料確保が必要であり,大腸菌培養によるリコンビナントサンプル確保のための費用に当てる.
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