• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

コレステロール合成経路抑制による脂肪肝発症の新規機構の解明と治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26870533
研究機関自治医科大学

研究代表者

永島 秀一  自治医科大学, 医学部, 講師 (30406136)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード脂肪肝 / スタチン / HMG-CoA還元酵素 / クッパー細胞 / マクロファージ
研究実績の概要

非アルコール性脂肪肝/脂肪肝炎(NAFLD/NASH)患者の多くが脂質異常症を有しておりコレステロール合成経路のHMG-CoA還元酵素(HMGCR)阻害薬スタチンを必要としている。スタチン投与で脂肪肝が悪化することはないとされているが、我々は肝細胞特異的HMGCR欠損マウスが顕著な脂肪肝を呈することを報告した。この矛盾は肝細胞と肝細胞以外で脂肪肝発症に関わるとされる肝臓内のマクロファージであるクッパー細胞や脂肪細胞におけるHMGCRの阻害の差異に起因する可能性があり、①肝細胞特異的なHMGCR阻害による脂肪肝発症の詳細な機序の解明と、②マクロファージ特異的HMGCR欠損マウスと脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスを作成して脂肪肝に抵抗性であるかを調べることを本研究の目的とした。これまでの実績としてマクロファージ特異的HMGCR欠損マウスの解析結果を示す。
A. 欠損マウスのマクロファージは遊走能が49%、増殖能が34.8%低下していた。このほかの接着能、貪食能、泡沫化能、マクロファージ自身のアポトーシス変化において変化がなかった。またマクロファージの炎症性サイトカイン遺伝子の発現をみたところ、炎症惹起性のTNF-α、IL-6の発現が亢進していた。
B. 脂肪肝誘導食を負荷した後に体重、肝臓及び肪組織の重量に変化はみられなかったが、欠損マウスの肝臓トリグリセリド含量は36.9%の低下を認めた。一方で肝臓の総コレステロール含量に変化は認めなかった。血漿のトランスアミナーゼ、総コレステロール、トリグリセリド、遊離脂肪酸の変化は認めなかったが、空腹時血糖は、対照マウスと比較し約13%の有意な低下を認めた。
以上よりクッパー細胞のHMGCRを欠損させると脂肪肝が抑制され、それに伴い耐糖能も改善される可能性がある。これにはクッパー細胞の遊走能などの機能抑制が関与している可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題においては①肝細胞特異的なHMGCR阻害による脂肪肝発症の詳細な機序の解明と、②マクロファージ特異的HMGCR欠損マウスと脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスを作成して脂肪肝に抵抗性であるかを調べることを目的としている。このなかで主に②のマクロファージ特異的HMGCR欠損マウスの解析を行い、肝内マクロファージであるクッパー細胞の脂肪肝発症における機序を示すことがおおむねできていると考えている。このほか①や②の脂肪細胞特異的なHMGCR欠損の研究進捗が遅延しており、研究助成期間3年のなかでの2年間の上記研究成果を考えた場合、上記区分とした。

今後の研究の推進方策

本研究課題では①肝細胞特異的なHMGCR阻害による脂肪肝発症の詳細な機序の解明と、②マクロファージ特異的HMGCR欠損マウスと脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスを作成して脂肪肝に抵抗性であるかを調べることを目的としている。このなかで主に②のマクロファージ特異的HMGCR欠損マウスの解析においてはさらに腹腔マクロファージではなく、直接肝クッパー細胞を単離して解析する。また①については肝細胞特異的HMGCR欠損による脂肪肝の発症の機序の同定と、②についてはCre-lox pシステムにより脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスを作製し、脂肪肝抑制の表現型を示すかを確認する。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題では①肝細胞特異的なHMGCR阻害による脂肪肝発症の詳細な機序の解明と、②マクロファージ特異的HMGCR欠損マウスと脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスを作成して脂肪肝に抵抗性であるかを調べることを目的としている。このなかで主に②のマクロファージ特異的HMGCR欠損マウスの解析が施行できているが、これに加えて、①と②脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスの解析を行う必要があるため。

次年度使用額の使用計画

②のマクロファージ特異的HMGCR欠損マウスの解析についてはさらに、腹腔マクロファージではなく、直接肝クッパー細胞を単離して、その浸潤の多寡、クッパー細胞の機能、炎症惹起性を調べ、HMGCR欠損とこれらの変化を結びつける分子機序を明らかにする。また①については肝細胞特異的HMGCR欠損による脂肪肝の発症は、脂肪酸合成系路の最上流に位置するsterol regulatory element binding protein (SREBP) 1cに非依存的で、かつ非ステロール経路の抑制であることは我々の先行研究で明らかになっているため、この経路の同定と、また欠乏している代謝産物を投与することで脂肪肝が抑制されるかを確認する。②についてはCre-lox pシステムにより脂肪細胞特異的HMGCR欠損マウスを作製し、脂肪肝抑制の表現型を示すかを確認し、そうであればその機序を解明する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Plasma cholesterol-lowering and transient liver dysfunction in mice lacking squalene synthase in the liver2015

    • 著者名/発表者名
      Nagashima S, Yagyu H, Tozawa R, Tazoe F, Takahashi M, Kitamine T, Yamamuro D, Sakai K, Sekiya M, Okazaki H, Osuga J, Honda A, Ishibashi S.
    • 雑誌名

      J Lipid Res

      巻: 56 ページ: 998-1005

    • DOI

      10.1194/jlr.M057406

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Successful pregnancy outcomes in a patient with type A insulin resistance syndrome2015

    • 著者名/発表者名
      Enkhtuvshin B, Nagashima S, Saito N, Wakabayashi T, Ando A, Takahashi M, Sakai K, Yamamuro D, Nagasaka S, Tamemoto H, Ishibashi S.
    • 雑誌名

      Diabet Med

      巻: 32 ページ: e16-e19

    • DOI

      10.1111/dme.12659

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Critical role of the length of the first β strand in insulin receptor kinase activity2015

    • 著者名/発表者名
      Enkhtuvshin B, Tamemoto H, Nagashima S, Tumenbayar B, Sakai K, Osuga J, Takahashi M, Tominaga S, Ishibashi S.
    • 雑誌名

      Jichi Medical University journal

      巻: 38 ページ: 1-8

    • 査読あり
  • [図書] そうだったんだ!脂質異常症2016

    • 著者名/発表者名
      永島秀一、石橋俊
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      文光堂

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi