本研究の目的は,近現代日本における医療の供給および受療の経済的実態を,地域社会に即した事例分析にもとづいて解明することである。 医療供給システムについては,近現代を通じて開業医による病院医療供給がなされてこなかった島根県鹿足郡の事例,および戦後に「県営医療」を大きな特徴とするに至った岩手県地域の事例を明らかにした。 医療費支払いシステムについては,戦後「国民皆保険」成立のための焦点であった大都市における国民健康保険形成プロセスを,名古屋市に即して社会経済的背景および政治過程から解明したほか,北海道根室地域で操業していた漁業経営史料から近代日本における医療費支払いの実態を明らかにした。
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