研究課題
昨年度までの研究成果から、TLE3は間葉系幹細胞から脂肪細胞と骨芽細胞への運命決定を司ることが明らかになった。骨や骨格筋などの機能低下は運動能力低下に直結し、日常生活動作や生活の質が低下する。とりわけ骨格筋は体重の約40%を占め、老化によって劇的にその量と機能低下を示すため、超高齢社会の我が国ではいかに骨格筋の量・質を維持するかが重要である。TLE3はGroucho/TLEファミリーに属する転写調節共益因子であり、bHLH転写因子を含む様々な転写因子に作用することが知られ、TLE1からTLE4の4種類が存在する。そして、そのいずれもが発生や細胞分化に重要な役割を果たすと考えられている。この4つのTLEのうち、TLE3はもっとも多く筋組織に発現し、さらに筋細胞は脂肪細胞や骨芽細胞と同様に間葉系幹細胞から分化するため、本年度は筋分化におけるTLE3の作用を検討した。多能性間葉系細胞株10T1/2を用いて筋分化のマスターレギュレーターであるbHLH転写因子MyoDが誘導する筋分化に対するTLE3の作用をReal time PCR法と免疫染色法で検討した。すると、TLE3の過剰発現はMyoDにより誘導された筋分化マーカーのMyogeninやMyosin Heavy Chainの発現を抑制した。それとは逆にTLE3のノックダウンによりこれらの筋分化マーカーの発現が亢進した。また、免疫沈降法によりMyoDとTLE3は会合し、さらにTLE3はMyoDが誘導するMyogeninのプロモーター活性を抑制することが明らかとなった。以上より、TLE3はマスターレギュレーターであるMyoDに作用しその転写活性を抑制することで、筋分化を制御している可能性が明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件)
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