研究課題/領域番号 |
26870544
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城戸 淳 熊本大学, 医学部附属病院, その他 (70721215)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖原病Ia型 / 肝臓分化 / iPS細胞 / グリコーゲン |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ヒト糖原病Ia型iPS 細胞(GSDIa-iPSC)、ヒト正常iPS 細胞(N1 iPSCと201B7 iPSC)をSoga M. et al.2015 Stem cells. 33: 1075-1088で行われた肝細胞分化のプロトコールを使用して、成熟肝細胞の樹立を行った。 肝細胞分化4日後では、内胚葉のマーカーであるSOX17とCXCR4、7日後では、HNF4αとHNF6、18日後ではアルブミンとアルファフェトプロテインの遺伝子発現を確認できた。この方法では、分化誘導細胞の約80%以上がアルブミン陽性細胞にすることが可能であり、実際にヒト糖原病Ia型iPS 細胞とヒト正常iPS 細胞からは、80%以上がアルブミンを産生する細胞に分化することができた。また、これらの細胞は、同様にアルファフェトプロテイン陽性細胞であった。さらに、これらの肝細胞の中には、明らかにインドシアニングリーンテストにおいてインドシアニングリーンの取り込みと排出が可能な肝細胞が存在していた。PAS染色においてもグリコーゲンの蓄積を分化誘導にて獲得したそれぞれの肝細胞で確認できた。また、CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、 CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A7などの薬物代謝酵素の遺伝子発現は、ヒト糖原病Ia型iPS 細胞とヒト正常iPS 細胞に比べて、肝細胞に分化誘導したヒト糖原病Ia型iPS 細胞由来の肝細胞とヒト正常iPS 細胞由来の肝細胞からのほうがあきらかに発現していた。 GSDIa-iPSCの遺伝子修復を行うCRISPR/Cas9 システムの確立では、どのiPS細胞が遺伝子修復できているかは不明であり、形成されたコロニーに対してすべてシークエンスを行なわければ、遺伝子修復ができているかの確認ができない。遺伝子修復されたGSDIa-iPSCを簡易的に選別できるシステムが構築できないでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GSDIa-iPSCの遺伝子修復を行うCRISPR/Cas9 システムの確立がうまくいかないため、遺伝子修復技術が確立しない。このため、本来の研究目的を修正する必要がある。しかしながら、平成27年度以降の目標であったiPSCからの肝細胞の確立は、N1 iPSC、201B7 iPSC およびGSDIa-iPSCにおいて、肝細胞に分化誘導し、肝細胞であることが確認できたので、おおむね予定通りに進んでいる。また、Song Z et al. (Cell Res 2009;19:1233-1242), Si-Tayeb K et al. (Hepatology 2010; 51: 297-305) およびChen YF et al. (Hepatology 2012; 55: 1190-1203)が行っている肝臓分化誘導システムも利用し、さらに成熟し、機能解析に適した肝細胞の確立を考案している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子修復されたGSDIa-iPSCを簡易的に選別できるシステムの構築の目途は立っていないが、機能解析に適した肝細胞の確立は計画的に進んでいるので、N1 iPSCまたは201B7 iPSCとGSDIa-iPSCからの肝細胞において、Glucose-6-Phosphataseの発現を確認でき次第、これらの細胞由来からの肝細胞を低血糖条件下で培養し、ERストレス、オートファジーおよびガン関連遺伝子の発現等について比較検討してGSDIaにおける新規の病態解析を行う。また、 これらの病態メカニズムをターゲットとする薬剤スクリーニングやグリコーゲンの蓄積を緩和する薬剤スクリーニングを行なうことによって、新規の治療法の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞の培養とiPS細胞の肝臓への分化実験は、かなりのお金を必要とする。これらに対するお金は、到底私のこの科研費だけではまかなえない。しかしながら、私の所属する研究室の別のプロジェクトと並行して行うことで、この科研費のプロジェクトの経費が節約できた。したがって、今年度は最小限の経費でiPS細胞の培養とiPS細胞の肝臓への分化実験を行った。これからは、糖原病と正常型のiPS細胞から、さらに分化成熟した肝細胞を樹立する別のシステムを作り上げ、その機能評価と病態解析を行う予定でいるため、できるだけそちらにお金をまわせるように計画し、お金を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
持ち越したお金と次年度の予算で、ERストレス、オートファジーおよびガン関連遺伝子の発現等について比較検討し、糖原病Ia型における新規の病態解析を行い、さらにこれらの病態メカニズムをターゲットとする薬剤スクリーニングを行う予定である。さらに新しい肝臓細胞への分化システムでは、培地とグロースファクターにかなりのお金を必要とし、病態解析の実験についても、できるだけ多くのお金を必要とするため、この予算で賄えるかは不安である。
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