研究課題
本研究は、ミトコンドリア病の新規原因遺伝子の発見および新たな疾患発症メカニズムの解明を目的とする。現在までに250近くのミトコンドリア病原因遺伝子が報告されているが、そのほとんどはミトコンドリア局在のタンパク質をコードしている。申請者らの先行研究では150を超えるミトコンドリア病患者を対象としたエクソーム解析を実施し、そこから非ミトコンドリア関連遺伝子を多数同定した。本研究ではこのうち、特に小胞体(ER)とミトコンドリアの接触点(MAM)に局在するタンパク質に着目し、新規ミトコンドリア病原因遺伝子の発見とMAMを介した新たな疾患発症のメカニズムの解明を行う。エクソーム解析からMAM局在が示唆される2つの遺伝子(MAM-A、MAM-B)を常染色体劣性遺伝形式の原因候補として同定した。まず、ハプロタイプ解析を行い、MAM-A、MAM-Bの異なる2つの変異が異なる染色体に由来するものであることを明らかにした。次に、患者由来線維芽細胞ではMAM-AのmRNAとタンパク質の両方の発現が顕著に減少していることを明らかにした。一方で、患者由来線維芽細胞におけるMAM-BのmRNAとタンパク質は正常細胞と大きな差はなく、mRNAとタンパク質の発現に影響しない変異であることが示唆された。次に、HepG2細胞を用いて、MAM-AとMAM-BのsiRNAノックダウンを行った。siRNA処理した細胞のミトコンドリアを回収し、ミトコンドリア内の呼吸鎖複合体量の変化を観察した。MAM-AとMAM-BのsiRNA実験では、ともに特定のsiRNAクローンで呼吸鎖複合体量の減少を観察した。これらの結果は、MAM-AとMAM-Bともにそれぞれの患者におけるミトコンドリア病の原因遺伝子であることを強く示唆する。また、MAMのイメージング観察のための実験材料の準備を進めた。
2: おおむね順調に進展している
2つのMAM関連遺伝子をミトコンドリア病原因候補遺伝子として同定し、ハプロタイプ解析またmRNA発現解析、タンパク質発現解析、siRNA実験を行い、原因遺伝子であることの検証を行った。本年度の目標であった、"MAM 関連遺伝子のミトコンドリア病原因遺伝子としての確定"をおおむね達成することができた。また、蛍光メージングの解析環境の構築も計画していたが、観察に必要なベクターや細胞の作成を行った。ERとミトコンドリアに局在を示す蛍光タンパク質を発現する細胞を作成した。今後、この細胞を用いて、ERとミトコンドリアの動態観察を行っていく。
ミトコンドリアとER局在を示す蛍光タンパク質を発現する細胞を用い、各MAM関連遺伝子のノックダウンを行い、細胞内におけるミトコンドリアとERの動態変化を明らかにしていく。さらに、MAM 関連遺伝子欠損によるER カルシウム制御、オートファジー、アポトーシス制御への影響を観察する。また、当初の目的にはなかったが、我々はゴルジ体に局在を示す原因候補遺伝子を同定しており、これらの解析も並行して行っていく。異なる細胞内小器官の相互作用がどのようにミトコンドリア病の発症に関連するか、上記の解析等で検証していく。
本年度の最後に、MAM関連遺伝子などのクローニングのため、オリゴDNAの購入を予定していたが、残りの予算がわずかに足りず、15,788円ほど残金が生じた。
上記のように、MAM関連遺伝子などのクローニングのためのオリゴDNAの購入を予定していたため、特に前年度の残金はその購入に使用する。
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